膝のケガ、女子はサッカーとバスケ、男子はアメフトにご用心?
膝の前十字靭帯損傷は競技スポーツなどでよく起こります。今回著者らは、アメリカでスポーツをする代表レベルの高校生で競技や性別によってどのようなリスクの違いがあるのかを調べました。
◆論文検索による事例調査
著者らは、公共の論文データベースから前十字靭帯損傷を報告している論文を調べ、性別やスポーツ別の分類を行いました。全体の競技者数は、アメリカにおける各競技連盟の
◆女子の方が前十字靭帯損傷が発生するリスクが高い
著者らは、以下の調査結果を得ました。
調査では3779報の論文を対象とし、10報が我々の判断基準にかない、のべ11,239,029名の競技参加者中700名の前十字靭帯損傷を見出した。発生リスクは1000回の競技回数のうち0.062人(95%信頼区間は0.058から0.067)であった。女子より男子の方で前十字靭帯損傷例が多く報告されているものの、女子の方が競技回数辺り高い損傷率を示した(相対リスクは1.57、95%信頼区間は1.35から1.82)。[...]女子においてシーズン辺り最も高い損傷リスクはサッカー(1.11%、95%信頼区間は0.96%から1.29%)、バスケットボール(0.88%、95%信頼区間0.71%から1.06%)、およびラクロス(0.53%、95%信頼区間は0.19%から1.15%)である。比較して、男子における高確率はアメリカンフットボール(0.8%、95%信頼区間は0.71%から0.91%)、ラクロス(0.44%、95%信頼区間は0.18%から0.9%)およびサッカー(0.3%、95%信頼区間は0.22%から0.41%)である。
つまり、損傷例は男子の方が多いですが、割合は女子の方が1.57倍も高い事が分かりました。競技別ではサッカー(年間で女子1.11%、男子0.3%)、バスケットボール(女子0.88%)、アメリカンフットボール(男子0.8%)、ラクロス(女子0.53%、男子0.44%)が高リスクの結果となりました。
著者らは、「高校女子スポーツ選手は男子と比較して、競技量あたりの前十字靭帯損傷の率が約1.6倍高い。しかしながら、サッカーやフットボール、バスケットボールおよびラクロスといった高リスクのスポーツでは性別に関わらず
女子サッカーが高い割合を示していますが、各競技を選ぶ子供達の体格や競技背景、指導者のレベルによって、この様な事故が起きる割合は異なるかもしれません。女子の割合が高いのも、男性女性の体の違いより他の要素(競技設備、選手間レベルの違い等)も考えられます。子供の将来にとっても大きな影響を及ぼす怪我でありますから、事例をより
執筆者
Sport-Specific Yearly Risk and Incidence of Anterior Cruciate Ligament Tears in High School Athletes: A Systematic Review and Meta-analysis.
Am J Sports Med. 2015 Dec 11.
[PMID: 26657853]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。