2016.01.15 | ニュース

1型糖尿病を治療する”人工膵臓”は安全に血糖値を維持できるか?

8人の治療経過から
from Diabetes care
1型糖尿病を治療する”人工膵臓”は安全に血糖値を維持できるか?の写真
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糖尿病の治療に、血糖値を下げるホルモンの注射があります。その応用として、”人工膵臓”と期待される装置が研究されています。ホルモンを繰り返し体内に送り込み、血糖値をコントロールするしくみのシミュレーションが行われました。

◆グルカゴンは期待通りに血糖値を上げるか?

この研究では、”人工膵臓”のしくみを再現するために、血糖値を上げるホルモンのグルカゴンを繰り返し注射したときの効果を調べました。

糖尿病の代表的な治療法に、血糖値を下げるホルモンのインスリンの注射があります。インスリンの効果は広く認められていますが、血糖値が下がりすぎると意識を失うなどの危険な状態に陥ることもあり、注意が必要です。

この研究は、”人工膵臓”からインスリンを注入して血糖値を下げるとともに、血糖値が下がったときにはグルカゴンを注入することで、血糖値を適切な範囲に維持するというしくみを検討しています。

このしくみを実現するには、グルカゴン注入により血糖値を上げる効果が安定して得られる必要があります。

グルカゴンは、おもに肝臓に蓄えられているグリコーゲンを代謝することで血糖値を上げる作用がありますが、グリコーゲンが消費されて少なくなると、同程度の効果が得られないことも考えられます。

この研究では、成人の1型糖尿病患者が対象となり、グルカゴンの注射を16時間のうちに計8回続けて受ける前後で、肝臓のグリコーゲンの量と、血糖値の変化に違いがあるかを調べられました。

 

◆8回の注射の前後で変化なし

次の結果が得られました。

空腹状態において、グルカゴン投与前にはグリコーゲン量は平均21±3g/l(平均±標準誤差)であり、グルカゴン投与後には25±4g/lだった(有意差なし)。

インスリン作用モデルを使った推定で、90分間増加量AUCによって計測された血糖値の上昇は、最後のグルカゴン投与のあとでも最初の投与のあとと同等だった。

最初のグルカゴン注射のあとでも、最後のグルカゴン注射のあとでも、同程度に血糖値が上がりました。また、肝臓のグリコーゲンの量に変化は見られませんでした

 

グルカゴンとインスリンを使って血糖値を狙い通りにコントロールできるなら、実際の治療に役立つ”人工膵臓”に近付けるかもしれません。新しい治療を目指した検討が今も重ねられています。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Effect of Repeated Glucagon Doses on Hepatic Glycogen in Type 1 Diabetes: Implications for a Bihormonal Closed-Loop System.

Diabetes Care. 2015 Nov.

[PMID: 26341131]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。