◆IgA腎症とは
腎臓の糸球体という部分に炎症が起きる病気の一種で、IgAというタンパクが腎臓に溜まってしまうことが原因でおきます。ほとんど自覚症状はない疾患ですが、長年のうちに腎臓の機能が徐々に悪化して、透析が必要になる原因にもなりえます。
◆162人の腎機能検査値を3年間調査
この研究では、IgA腎症の患者で、1日当たり0.75g以上の尿タンパクの症状が続いている人が対象となりました。対象者を、通常の治療を行う群と、これに免疫抑制薬を併用する群に分け、腎機能の検査値について3年間調査を行いました。
◆免疫抑制薬のほうが改善が多いが、副作用も
次の結果が得られました。
3年後、支持的治療群で4人(5%)の患者が、免疫抑制薬群で14人(15%)の患者が完全な臨床的寛解を得た(P=0.01)。
免疫抑制薬群では支持的治療群よりも多くの患者に、最初の1年での重症の感染症、耐糖能異常、5㎏を超える体重増加が見られた。免疫抑制薬群で1人の患者が敗血症により死亡した。
通常の治療を受けた群よりも、免疫抑制薬を併用した群のほうが、3年後に検査値が一定水準まで改善している割合が多くなりました。しかし、副作用の可能性があることとして、免疫抑制薬を併用した群で敗血症により死亡した人が1人いました。
IgA腎症は難病とされ、免疫抑制薬による治療も以前から研究されていますが、この研究でも見られたように、感染症につながる恐れがあるとも言われています。長期的に有効で安全な治療法は今も模索されている途上です。
執筆者
Intensive Supportive Care plus Immunosuppression in IgA Nephropathy.
N Engl J Med. 2015 Dec 3.
[PMID: 26630142]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。