◆ヒト-ヒト感染は非常に珍しい
鳥インフルエンザが人に感染することはまれで、特に人から人への感染はあってもごくわずかと考えられています。これまで報告された事例の多くは、近親者の間で感染したものです。この報告は、H7N9型の鳥インフルエンザウイルスが、血縁のない人の間で院内感染したと見られるものです。
◆鳥に触れていない人が死亡、ウイルス検出
2015年2月に中国の浙江省で、以下のことが起こりました。
ある49歳男性(発端患者)で、家禽の生鮮市場に行った7日後に症状が現れた。ほかのCOPDの既往がある57歳男性(第2の患者)で、発端患者と5日間同じ病棟にいたのち、インフルエンザ様症状が現れた。第2の患者は家禽市場に行っておらず、症状が現れる前の15日間に家禽や野鳥と触れたことはまったくなかった。2人の患者からH7N9ウイルスが同定され、2人とものちに死亡した。2人の患者から分離されたウイルスのゲノムシークエンスはほぼ一致し、家禽生鮮市場から分離されたウイルスと遺伝学的に類似していた。
最初の患者は、家禽の市場に行ったあとで発症しました。この人と同じ病棟にいた第2の患者は、それより前に鳥に触れていなかったにもかかわらず、インフルエンザのような症状を起こしました。2人からは家禽の市場で見つかったウイルスと似たウイルスが発見され、院内感染が起こっていた可能性があると見られました。患者は2人とも死亡しました。
この事例では、病棟の中で感染を媒介したものが発見されておらず、確かに院内感染だったのかどうか、また院内感染だとすればどのような経路で感染したのかは不明な点が残ります。しかし、人から人への感染が起こりうるのだとすれば、診断と治療、そして予防策に大きく影響します。本当に気を付けるべき危険があるのかどうか、今後の情報が待たれます。
執筆者
Nosocomial transmission of avian influenza A (H7N9) virus in China: epidemiological investigation.
BMJ. 2015 Nov 19
[PMID: 26586515]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。