2015.10.30 | ニュース

HIV感染を予防、テノホビルとエムトリシタビンで本当に感染は少なくなるのか?副作用は?

イングランド544人のランダム化試験

from Lancet (London, England)

HIV感染を予防、テノホビルとエムトリシタビンで本当に感染は少なくなるのか?副作用は?の写真

HIVに感染するリスクが高い人が抗ウイルス薬をあらかじめ使うことで感染を予防するという考えは以前からありますが、予防策がかえって危険な行動を促す場合も知られています。実際に薬を使って感染が少なくなるかが検討されました。

◆1年間予防薬を使ったか使わなかったかで比較

研究班は、イングランドで、男性と性交をする男性544人を対象として、テノホビルジソプロキシルフマル酸塩とエムトリシタビンという2種類の有効成分を含む薬を使い、HIV感染の予防を行いました。

対象者はランダムに、すぐ予防薬を使うグループ(275人)と、1年の待機期間を置いてから予防薬を使うグループ(269人)に分けられました。最初の1年間は一方の人が予防薬を使い、もう一方の人は使っていないことになります。

 

◆100人年あたり7.8件減少

およそ1年間の追跡調査により、次の結果が得られました。

即時予防グループで3件のHIV感染が起こり(100人年あたり1.2件)、予防遅延グループでは曝露後の感染防止治療が174件処方されたにもかかわらず、20件(100人年あたり9.0件)起こった(相対減少量86%、90%信頼区間64-96、P=0.0001、絶対差分は100人年あたり7.8件、90%信頼区間4.3-11.3)。

深刻な有害薬剤反応は記録されなかった。

すぐ予防薬を使うグループのほうがHIV感染が少なく、100人で1年あたりに換算して7.8件が予防されたと計算されました。深刻な副作用は見られませんでした。また、ほかの性感染症として直腸淋菌感染やクラミジア感染が多くなることも見られませんでした。

 

HIV感染の予防は重要な課題です。実際に感染が少なくなったという結果でしたが、抗ウイルス薬を多用することで、ウイルスに薬剤耐性が生まれる恐れも考えられ、この結果だけで予防薬を使うべきとは言い切れません。しかし、有効なワクチンが作られていない中の対策として、ひとつの参考になるかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Pre-exposure prophylaxis to prevent the acquisition of HIV-1 infection (PROUD): effectiveness results from the pilot phase of a pragmatic open-label randomised trial.

Lancet. 2015 Sep 9 [Epub ahead of print]

[PMID: 26364263]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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