イベルメクチンで救命、フィラリアが心臓の拍動を阻害していた

寄生虫の感染によって起こるフィラリア症は、日本では根絶されたと言われていますが、まだ多くの国で流行が見られます。インドの研究班から、心タンポナーデという危険な状態に陥った人がイベルメクチンによる治療で回復した例が報告されました。
◆フィラリア症から心タンポナーデに
バンクロフト糸状虫など、フィラリアと総称される寄生虫が感染して起こすフィラリア症では、リンパ管が障害されることで象皮症などの
この人は発熱、全身の脱力のあと咳と呼吸困難の症状が起こって入院しました。検査で心タンポナーデが診断され、心嚢の液体を抜き取る治療の結果、血液を含む大量の滲出液が抜き取られ、その中にバンクロフト糸状虫が見つかりました。
◆ジエチルカルバマジンの治療後に再発、イベルメクチンで治癒
治療のため、フィラリアに有効とされるジエチルカルバマジンが使われ、退院となりました。ところが、6週間後に再び心タンポナーデが起こり、イベルメクチンとアルベンダゾールという違う種類の薬を使ってフィラリア駆除の治療を行ったところ、回復が見られました。この報告の執筆時点まで再発はありませんでした。
フィラリア症はいまも多くの人を苦しめています。この症例報告でも使われていたイベルメクチンは、2015年のノーベル医学生理学賞に選ばれた大村智氏らの研究をもとに開発された薬で、フィラリアを含むいくつかの寄生虫に対する治療に貢献しています。
執筆者
Recurrent Hemorrhagic Pericardial Effusion and Tamponade due to Filariasis Successfully Treated withIvermectin and Albendazole.
Heart Views. 2015 Apr-Jun
[PMID: 26240733]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。