2015.12.31 | ニュース

疥癬対策に集団まとめて治療、活躍したのは「あの薬」

2,051人を分析

from The New England journal of medicine

疥癬対策に集団まとめて治療、活躍したのは「あの薬」 の写真

疥癬は、ヒゼンダニが皮膚に寄生して起こる感染症です。今回の研究では、疥癬が流行している集団にまとめて治療薬を使い、その有効性を検証しました。

◆疥癬対策に集団治療は有効か?

疥癬の治療薬では、殺虫剤の一種であるペルメトリン(日本では未承認)やイベルメクチンなどが使われます。また、治療薬を使う場合、感染者やその接触者にのみ使う場合と、感染者がいる集団にまとめて使う場合があります。

今回の研究では、疥癬の流行がある地域から集めた2,051人の対象者を、感染者にペルメトリンを使用する標準ケア群、集団にペルメトリンを使用する群、集団にイベルメクチンを使用する群の3群に分け、治療の効果を比較しました。

 

◆イベルメクチンの集団治療がもっとも有効

以下の結果が得られました。

標準ケア群では36.6%から18.8%(割合の相対リスク減少49%、95%信頼区間37-60)、ペルメトリン群では41.7%から15.8%(割合の相対リスク減少62%、95%信頼区間49-75)、 イベルメクチン群では32.1%から1.9%(割合の相対リスク減少94%、95%信頼区間83-100)に割合は減少した。

疥癬感染者の割合は、イベルメクチンの集団治療で最も低下しました。また、かゆみや頭痛などの副作用は軽度で、その数はイベルメクチン群ではペルメトリン群よりも多かったという結果でした。

 

イベルメクチンは、2015年にノーベル医学・生理学賞を受賞した大村智氏の研究をもとに生まれた治療薬で、さまざまな寄生虫感染症の治療薬として世界中の人の命を救っています。疥癬は日本でも多く見られ、介護施設などでの流行が問題になることもありますが、そこにもイベルメクチンの出番があります。年末には今年話題になった重要な業績を振り返ってみるのもいいかもしれません。

執筆者

Shuhei Fujimoto

参考文献

Mass Drug Administration for Scabies Control in a Population with Endemic Disease.

N Engl J Med. 2015 Dec 10

[PMID: 26650152]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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