◆高リン酸血症患者を52週間治療
血液にリン酸が多い状態(高リン酸血症)では、血管の壁にリン酸カルシウムがたまる石灰化が起こりやすく、動脈硬化が進みやすくなると考えられています。
この研究は、スクロオキシ水酸化鉄と既存薬のセベラマーを24週間の治療で比較した以前の研究の終了後、参加者をさらに28週間追跡し、あわせて52週後での効果を比較したものです。
治療開始時点で血液透析または腹膜透析を受けていて、高リン酸血症があった患者が対象となりました。対象者はランダムに、スクロオキシ水酸化鉄を使うグループとセベラマーを使うグループに分けられ、52週間の治療を受けました。
◆スクロオキシ水酸化鉄のほうが錠剤の数が少ない
次の結果が得られました。
延長研究のベースラインから52週までの血清リン濃度変化量の平均±標準偏差はスクロオキシ水酸化鉄群で0.02±0.52mmol/l、セベラマー群で0.09±0.58mmol/lだった。
28週の延長研究において一日の服用錠剤数はセベラマー(10.1±6.6)に比べてスクロオキシ水酸化鉄(4.0±1.5)で少なかった。
胃腸関連有害事象はどちらの治療でも類似し、早期に起こったが、経時的に減少した。
どちらの治療でも、24週時点とほぼ同じ水準にリン酸は維持されていました。スクロオキシ水酸化鉄を使ったグループのほうが、一日に飲む錠剤の数が少なくなりました。
標準的な用法・用量では、どちらの薬も一日3回飲むとされていますが、セベラマーは1回あたり4錠程度になる量で錠剤が作られています。
研究班は「スクロオキシ水酸化鉄の血清リン減少効果は1年間維持され、セベラマーと比べてより少ない服用錠剤数と関連した」とまとめています。
透析治療は長期間に及ぶことも多く、その間の安定したケアは重要です。スクロオキシ水酸化鉄は、日本では2015年9月に、透析中の慢性腎臓病患者における高リン酸血症の治療として承認されました。今後透析治療を受ける人の役に立つことを期待されます。
執筆者
Long-term effects of the iron-based phosphate binder, sucroferric oxyhydroxide, in dialysis patients.
Nephrol Dial Transplant. 2015 Jun
[PMID: 25691681]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。