2015.10.05 | ニュース

難治性の急性リンパ性白血病を治療、ブリナツモマブで「43%」

成人難治例189人の第2相単一群試験
from The Lancet. Oncology
難治性の急性リンパ性白血病を治療、ブリナツモマブで「43%」の写真
(C) Giovanni Cancemi - Fotolia.com

急性リンパ性白血病(ALL)は主に化学療法で治療されますが、十分な効果が得られないこともあります。治療薬のブリナツモマブを、ほかの薬による治療のあと再発した場合などに使う研究が行われました。

◆難治例が対象

この研究では、成人の急性リンパ性白血病患者で、「Ph染色体陰性B細胞前駆型リンパ芽球性白血病」という診断にあたり、ほかの治療で効果が十分でないか再発があった人189人が対象となりました。

対象者はブリナツモマブを使った治療を受け、その後の経過を記録されました。

 

◆43%に完全寛解/血液学的回復をともなう完全寛解

次の結果が得られました。

2サイクルののち、81人(43%、95%信頼区間36-50)の患者が完全寛解(CR)または末梢血算の部分的な血液学的回復をともなう完全寛解(CRh)を達成した。63人(33%)の患者がCR、18人(10%)の患者がCRhに至った。

決められたスケジュールに沿ってブリナツモマブの治療を行った結果、対象者の43%で、白血病の細胞が少なくなる完全寛解などの状態に至る効果が見られました

安全性について次の結果が得られました。

最も頻繁に見られたグレード3以上の有害事象は発熱性好中球減少症(48人、25%)、好中球減少(30人、16%)、貧血(27人、14%)だった。3人(2%)の患者にグレード3のサイトカイン放出症候群が起こった。神経学的イベントは、最悪時のグレード3のものが20人(11%)、グレード4のものが4人(2%)に起こった。3人の死亡(敗血症大腸菌敗血症カンジダ感染による)が研究者によって治療関連と見られた。

白血球の一種で免疫の働きを持つ好中球が少なくなるなど、副作用と見られる変化が一部で報告され、対象者のうち感染症などで死亡した3人は、治療が死因に関係していると見られました。

 

急性リンパ性白血病では、最初の治療で効果が見られたあとも再発の可能性があるため、長期間の治療が必要になります。ブリナツモマブの効果をどう評価するかは副作用ともあわせて十分検討する必要がありますが、もしほかの薬が十分有効でない場合の備えになることができれば、治療を少しでも確かなものにするために役立つかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Safety and activity of blinatumomab for adult patients with relapsed or refractory B-precursor acute lymphoblastic leukaemia: a multicentre, single-arm, phase 2 study.

Lancet Oncol. 2015 Jan

[PMID: 25524800]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。