◆慢性腎臓病と高カリウム血症による死亡との関連を検証
この研究は、慢性腎臓病によって高カリウム血症が起こる頻度、またそれによる死亡がどの程度多く見られるかを検証しました。
兵役経験者245,808人のデータを統計解析し、慢性腎臓病と高カリウム血症の関連、また高カリウム血症の発症から1日以内の死亡との関連を調べました。
◆慢性腎臓病では高カリウム血症による死亡に関連
以下の結果が得られました。
高カリウム血症の調整済発生率は、RAAS阻害薬の治療を受けている患者(100人月あたり7.67 vs 2.30、p<.001)と受けていない患者(100人月あたり8.22 vs 1.77、p<.001)では、CKDではない患者よりもCKDである患者の方が高かった。
中等度(カリウム値5.5mEq/l以上6.0mEq/l未満[mmol/l換算では1.0を掛ける])と重度(カリウム値6.0mEq/l以上)の高カリウム血症による死亡の調整済みオッズ比(OR)は、CKDではなく、カリウム値が正常である場合と比べて、CKDがない場合(ORはそれぞれ10.32、31.64)、ステージ3の場合(ORはそれぞれ5.35、19.52)、ステージ4の場合(ORはそれぞれ5.73、11.56)、ステージ5の場合(ORはそれぞれ2.31、8.02)であり、すべてp<.001であった。
血中カリウムを減らす作用のあるレニン・アンジオテンシン系阻害薬による治療を受けているかどうかで分けたとき、高カリウム血症の発生は慢性腎臓病があり治療を受けている人で100人月あたり7.67件、治療を受けていない人で100人月あたり8.22件と、いずれも慢性腎臓病がない人よりも多くなっていました。
また、高カリウム血症が見られたとき、1日以内の死亡は最大でオッズ比31倍という高い頻度で見られました。
筆者らは、「高カリウム血症のリスクはCKDにより増大し、その発生は発症後1日以内の死亡オッズを大きくする。」と結論づけています。
この結果と他の研究成果をふまえて、『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013』では、慢性腎臓病における血中カリウム値を一定の範囲(4.0から5.4mEq/l)で管理するように推奨しています。
執筆者
The frequency of hyperkalemia and its significance in chronic kidney disease.
Arch Intern Med. 2009 Jun 22
[PMID: 19546417]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。