◆ドネペジルで治療中の人が対象
研究班は、認知症の治療薬ドネペジルを1年を超えて使い続けている人を対象として選び、認知症の程度ごとに分けて、シロスタゾールという薬を使っていたかいなかったかで、認知機能の変化に違いがあるかを調べました。
シロスタゾールは血液を固まりにくくする薬で、脳梗塞の再発予防などに使われます。
◆MMSEスコアの変化に差があった
次の結果が得られました。
軽度の認知症があり、ドネペジルとシロスタゾールを使っていた患者(34人、77.2±6.8歳)では、観察期間の28.6±11.7か月において、1年あたりのMMSEスコアの変化は-0.5±1.6であり、ドネペジルだけを使っていた患者(36人、78.4±6.5歳)では30.4±12.8か月のうちにより低くなる(-2.2±4.1)ことに対して統計的な群間の差が見られた(P=0.022)。
軽度の認知症があった人のうち、シロスタゾールを使っていた人で、認知機能のスコアの低下が小さくなっていました。
研究班は「これらの結果は、軽度の認知症に対してドネペジルを使用中の患者において、認知機能の低下を抑制するシロスタゾール治療の可能性を示唆するが、中等度から重度の認知症の患者についてはこの限りでない」と結論しています。
この研究の方法では、シロスタゾールに認知機能低下を抑える効果があったとは必ずしも断言できません。シロスタゾールを使っていた人に認知機能と関わる背景の偏りがなかったか、たとえばシロスタゾールを使う理由になる脳梗塞が結果に影響していなかったかといった点は考えにいれて解釈する必要があります。
効果が期待できるかどうかは、臨床試験の結果しだいで決まっていくかもしれません。
執筆者
Cilostazol add-on therapy in patients with mild dementia receiving donepezil: a retrospective study.
PLoS One. 2014 Feb 26
[PMID: 24586841]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。