2015.07.29 | コラム

熱が出て慌ててしまう保護者の方へ〔小児科に行く前に〕

熱は体を守る正常反応

熱が出て慌ててしまう保護者の方へ〔小児科に行く前に〕の写真

体の中に病原体が入ってきたとき、それと戦う白血球が働きやすい環境にするために人間の体は熱をあげています。ウイルスの増殖を抑える役目もあり、体を守るために熱がでています。熱は生体防御反応ですので、積極的に下げる必要はありません。39度、40度あっても熱が直接、脳神経に影響することはありません。ただし、ぐったりして反応がわるい、顔色がわるいなど熱以外の全身状態の悪さがあるようなら受診してください。

こどもが熱を出すと慌ててしまう保護者の方ってたくさんいますよね。どうして熱が出るのかを知っているだけでも、落ち着いて対処できるようになります。

今回は熱のメカニズム、熱は下げたほうがいいのか、解熱剤の使用方法を解説します。

お子さんはよく熱を出しますが、熱はどうして出るのでしょうか?そして、発熱したときに、体温は必ず下げなければいけないのでしょうか?それを考えるときに、なぜ体温が上がるのかという、体の仕組みを知らなければなりません。

 

◆どうして熱が出るの?熱は下げたほうがいいの?

人間の体は、体の外からウイルスやバイ菌などの病原体、異物が侵入してきたときに、白血球という血液の成分が動き出し、その病原体や異物をやっつけようとします。白血球は体内の「警察官」の役割であり、悪いものを捕まえて、やっつけます。警察官の役割である白血球は体内で平熱よりも高い温度で働きだすため、「熱が上がる」という体の反応は、体を守る防衛反応であり、白血球が病原体、異物と戦っている証拠なのです。

さらに、かぜなどのウイルスは熱が高い時より低い時のほうが繁殖しやすい性質をもっています。そういう理由からやっきになって体温を下げる必要はないのです。お子さんが元気で、食事や水分もとれているのであれば、例え39度以上の発熱であっても、解熱剤は必要がないといってよいでしょう。しかし、高熱が続けば、体力はだんだんと消耗してきますので、慎重に経過を見守って下さい。

時折保護者の方から「40度も熱があって頭がおかしくなるんじゃないか」とご質問を受けることがあります。本人の状態は熱の高さだけでは判断できません。40度の発熱があっても、けいれんなどもなく意識がはっきりしていて、顔色もよさそうであれば、問題はありません。しかし、熱が高く意識状態が悪い、ぐったりして反応が悪い、顔色が悪いといった熱以外の症状もある場合には医療機関を受診して相談しましょう

 

◆解熱剤の使い方

子供の発熱のほとんどはウイルス感染による風邪(上気道炎や咽頭炎など)です。ウイルスが原因の風邪には特効薬はありません。症状をできるだけ和らげ、本人の免疫の力で治すのが基本です。

咳、痰などの症状が強いと、眠れなかったり、食事がうまくとれなかったりするために、風邪の薬(咳止め薬、痰切り薬)を飲み、子供の体力が落ちないようにサポートするのです。

解熱剤も同じような考え方のもと使用します。熱が高いと不機嫌になったり、ボーっとして水分や食事がとりにくくなり、更には眠りにつけないこともあります。発熱による本人の苦痛が強い場合には、積極的に解熱剤を使い、体温を少しでも下げ、症状を取り除いてあげましょう。そうすることで、食事、水分がうまく取れ、本人の体力が消耗することなく回復へ導いてあげることができます。

 

解熱剤は病気自体を治すお薬ではありません。体の中で発熱を引き起こしている物質の流れを止め、熱を一時的に下げるお薬で、平熱まで下がる場合もあれば、病気の勢いが強い場合には、使用してもなかなか下がらないこともあります。解熱剤は、症状を一時的に和らげるお薬なので、熱を正常まで下げることを目標にするのではなく、楽にしてあげるために使用してください。熱がほとんどさがらなくてもすこし元気になり、一時的に水分をとれるようになることが多いです。

 

◆解熱剤の種類 内服薬と坐薬

解熱剤には、内服薬と坐薬の2種類があります。成分は一緒ですので、効果としては同じと考えてください。しかし、熱が高くてぐったりしているお子さんになかなか、内服薬で飲ませることが困難なことがあります。そのような時は坐薬を使用するのが便利です。診察の際にご希望の薬の形態を医師にお伝えください。

解熱剤の使い回しは避けましょう。体重にあった量で使用しましょう。

お子さんの解熱剤は、体重に合わせて処方しておりますので、兄弟間で同じ解熱剤を使い回したりするのは思いがけない副作用が出る可能性がありますので、注意してください。また、1回使用したら、6時間から8時間はあけて使用しましょう。用法、容量を必ず守ってください

 

熱が高いからといってあわてるのは禁物です。しっかりとそのほかの症状を把握し、すぐに医療機関に受診すべき状態なのかを判断しましょう。お子さんが休むべき時間はしっかりと睡眠をとらせ、適切な時間に医療機関を受診しましょう。それが、お子さんの健康を守る第一歩です。

 

【編集部注】

この記事は、「キャップスクリニック」のサイトで公開中の記事をもとに作成しています。

http://www.caps-clinic.jp/forparents

執筆者

白岡 亮平

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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