プロバイオティクスで感染症は防げるか

手術の傷に病原菌が入ってしまうと、最悪の場合は死に至ることもあります。手術の場所を清潔にして感染を防ぎ、抗菌薬をうまく使うことで対策がなされますが、ここでは少し変わった試みを紹介します。人体に有益な微生物「プロバイオティクス」を、その働きを助ける物質とともに取り込めるようにした「シンバイオティクス」を手術の前後に摂取することで、感染性の合併症が減ったという結果が報告されています。
◆フライ手術を受ける人をランダム化
研究班は、慢性石灰化膵炎に対してフライ(Frey)手術という手術を受ける人を対象とし、対象者をグループAとグループBに分けて次の試験を行いました。
グループAは手術の5日前と10日後に特定のシンバイオティクス合成物を摂取した。グループBは偽薬を摂取した。
グループAの人はシンバイオティクスを摂取し、グループBの人は偽薬を摂取しました。
◆感染性の合併症が減少
試験から次の結果が得られました。
登録した79人の患者のうち、75人が試験を完了した(グループAが39人、グループBが36人)。術後の感染性の
合併症 の発症 率(グループAで12.8%に対してグループBで39%、P<0.05)、抗菌薬 治療の期間(P<0.05)、入院期間(P<0.05)がシンバイオティクス群で有意 に低かった。
シンバイオティクスを摂取したグループAでは術後の感染性の合併症が少なく、抗菌薬を使い続けた期間、入院期間が短くなっていました。
シンバイオティクスがどのように働いたのか明らかではありませんが、さらに詳しく検証を重ねれば、今後しだいに明らかになっていくかもしれません。
なお、シンバイオティクスについてはこちらの記事でも紹介しています。興味のある方はあわせてご覧ください。
「ヨーグルトのシンバイオティクスで子どもの発熱が減った」
執筆者
Synbiotics in Surgery for Chronic Pancreatitis: Are They Truly Effective? A Single-blind Prospective Randomized Control Trial.
Ann Surg. 2015 Jul
[PMID: 25575262]
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。