転ぶことが多くなった人は神経障害に注意が必要
糖尿病などさまざまな原因で感覚や運動、内臓の機能に異常が起きる末梢神経障害は、主に原因となった病気を治療することで改善が図られますが、元通りに回復しない場合もあります。早期発見と早期治療のために、アメリカのミシガン大学の研究班が転倒などの症状の現れ方を調べ、末梢神経障害の診断よりも3年以上前から、末梢神経障害のない人と違った特徴が見られることを報告しました。
◆65歳以上の末梢神経障害診断前の状態について解析
研究班は、アメリカで65歳以上の人を対象に行われた末梢神経障害についての研究で得られたデータを統計解析し、末梢神経障害と診断された人とそうではない人で、診断時以前の症状などに違いがあるかを調べました。
◆3年前から転倒が多く、5年前から痛みが多い
解析から次の結果が得られました。
953人の末梢神経障害患者と、傾向スコアでマッチした953人の対照群を同定した。末梢神経障害群では平均年齢は77.4歳、標準偏差6.7年で、対照群では76.9歳、標準偏差6.6年で、全体の42.1%に糖尿病があった。末梢神経障害の診断がなされる3.0年前には転倒に差があり(末梢神経障害群で32%、対照群で25%、P=0.008)、痛みの差は5.0年前から現れ(末梢神経障害群で36%、対照群で27%、P=0.002)、健康状態の自己評価が「良い」または「非常に良い」となる割合に5.0年前から差があった(末梢神経障害群で61%、対照群で74%、P=<0.0001)。
末梢神経障害の診断がなされた人では、診断の3年前から、転倒が多くなっていました。また、診断の5年前から、痛みの症状が現れることが多く、質問票で聞き取る健康状態の自己評価に「良い」または「非常に良い」という回答を出すことが少ない傾向がありました。
研究班は「中高年の人では、転倒、痛み、健康状態の自己評価の違いが、末梢神経障害の診断の3年から5年前に検出されうる[...]」と述べています。
高齢の人が転ぶと、骨折のため寝たきりなど深刻な状態に陥ることも多く、転倒をきっかけに何かの異常が起こっていないか、あるいは再び転ぶことを防ぐために全身の状態がどうなっているかを調べることには、末梢神経障害を調べる以外にも理由があるかもしれません。末梢神経障害を予測することで、原因となる病気の管理に役立てばいいですね。
執筆者
Longitudinal patient-oriented outcomes in neuropathy: Importance of early detection and falls.
Neurology. 2015 May 27
[PMID: 26019191]
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。