◆虚血性心疾患の入院患者が対象
この研究は狭心症などの急性の症状があり入院し、血中LDLコレステロールがおおむね正常範囲にあった18,144人を対象としました。高脂血症の薬を使っている人も基準値を設けて対象者に含めました。
対象者は、スタチンの一種であるシンバスタチンに加えてエゼチミブを飲んでLDLコレステロールを抑えるグループと、シンバスタチンと偽薬を飲むグループにランダムに振り分けられました。
◆LDLコレステロール53.7mg/dLで結果改善
中央値6年間にわたって治療を続け、以下の結果が得られました。
研究期間中のLDLコレステロールの時間加重平均は、シンバスタチンとエゼチミブの群で53.7mg/dL(1.4mmol/L)、シンバスタチンのみの群で69.5mg/dL(1.8mmol/L)だった(P<0.001)。Kaplan-Meier法による7年間の一次エンドポイントのイベント発生率はシンバスタチンとエゼチミブの群で32.7%、シンバスタチンのみの群で34.7%(絶対リスク差2.0ポイント、ハザード比0.936、95%信頼区間0.89-0.99、P=0.016)だった。
エゼチミブを併用したグループではLDLコレステロールが53.7mg/dLと、シンバスタチンだけのグループの69.5mg/dLよりも低くなり、また心血管疾患による死亡などをまとめた悪い結果が出る率も低くなっていました。
研究班はこの結果を「LDLコレステロールを以前の目標値よりも低く抑えることで効果が加わった」とまとめています。
脂質異常症の診断基準には、空腹時のLDLコレステロールが140mg/dL以上という基準が含まれており、この研究ではそれよりもかなり低い水準に抑えています。異常とは言えない人の間でも比較的リスクが高い人と低い人がいるのかもしれません。ただしこの研究は一度虚血性心疾患を起こした後という、再発のリスクがある人を対象にしているため、健康な人にも同じことが言えるかどうかについては別の研究が必要になりそうです。
執筆者
Ezetimibe Added to Statin Therapy after Acute Coronary Syndromes.
N Engl J Med. 2015 Jun 3. [Epub ahead of print]
[PMID: 26039521]
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