◆肝臓でCOX2を作らせたマウスは、太りにくくなった
著者らはまず以下の実験を行いました。
肝細胞にヒト由来のCOX2を強制的に発現させたところ、高脂肪食で引き起こされる脂肪蓄積、炎症反応、インスリン抵抗性が防がれた。これは脂肪肝、肥満、血漿と肝臓中の中性脂肪と遊離脂肪酸の低下、アディポネクチン/レプチン比の上昇、炎症性サイトカイン発現の低下を示した。またインスリン感受性と耐糖能は促進した。
マウスの肝細胞を操作して、COX2を作らせるようにしたところ、炎症反応の低下に加え2型糖尿病などが起こりにくくなりました。
◆COX2を作らせたマウスは、エネルギー消費が増えた
著者らは更に下記の結果も得ました。
ヒトCOX2トランスジェニックマウスは熱産生と脂肪酸酸化に部分的に起因するエネルギー消費の上昇を示した。肝臓中のインスリンシグナル解析の結果、インスリン受容体を介したAktリン酸化がトランスジェニックマウスで増加していた。
つまりヒトのCOX2を作らせたマウスは、体内でのエネルギー燃焼が促進され、太りづらくなっていました。
結論として著者らは、「COX2が肥満で引き起こされる代謝障害の治療標的となりうる」、と指摘しています。炎症は糖尿病などを起こす原因になると考えられることが多く、COX2は炎症時に作られる物質として知られていますが、この研究ではそのCOX2が糖尿病を抑える方向に働いたという結果が出ています。COX2が関わることで作り出される分子は多数あるので、その中のどれかに未知の働きがあったのかもしれません。
このアプローチからいつか新たな糖尿病治療薬が見つかるのでしょうか?
執筆者
Hepatic cyclooxygenase-2 expression protects against diet-induced steatosis, obesity, and insulin resistance.
Diabetes. 2015 May
[PMID: 25422106 ] http://diabetes.diabetesjournals.org/content/early/2014/11/20/db14-0979※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。