2015.06.06 | コラム

血圧180は、スピード違反!?

数値を見てもピンと来ない怖さ

血圧180は、スピード違反!?の写真

「血圧180は、毎日時速150キロで運転し続けるようなもの」  こう言われると、一瞬、ドキッとしてしまう方もいるのではないでしょうか。

血圧が高くて、降圧薬を飲み始めるというのは、よくある話です。しかし高血圧と言われても今ひとつピンと来ないのは、血圧160がどのくらい危険なのかが直感的に分かりにくいところに一因があります。

  • 1年で15キロ太った → 結構体に悪そう
  • 毎日カツカレーかラーメン → これも悪そう
  • 血圧 160 → ・・・ちょっと高め??

血圧は日々話題になる数値ではないので、どの程度真剣に怖がるべきなのかが分かりづらいのです。おまけに、将来の重病のリスクは上がるものの、すぐに悪影響が出るわけではないという点も、危機感を抱かせにくい原因となっています。

 

◆「血圧マイナス30」の法則

ここで、血圧の値をもっと身近に感じられるよう、これを車のスピードに例えてみましょう。高速道路の制限速度は時速100キロです。これを収縮期血圧と比べてみると、
〔血圧〕マイナス 30 =〔時速〕くらいのイメージが、感覚的に近いのではないかと思っています。

  • 血圧130 → 時速100キロ。制限速度を守る優良ドライバー
  • 血圧150 → 時速120キロ。速度オーバー
  • 血圧180 → 時速150キロ。毎日続くと、かなり危険

血圧が、何回か測ったうち一回だけ高かったというのは、さほど問題ではありません。追い越し車線の一瞬だけスピードアップしても、その時さえ気をつけて乗り切ってしまえば、後は事故を起こしにくいことと似ています。

高速道路でも実際のところ、全員が全員、厳密に速度を守っているわけではありません。周囲のスピードに合わせつつ、少しだけ超えてしまう場合があるという方もいるのではないでしょうか。しかし、一瞬なら大丈夫でも、ずっと血圧が高いままだと、いつか大事故につながる可能性があるというのが高血圧の問題点なのです。

 

◆ 300を超えることもある血圧

人間の血圧は、一日の中でも大きく上下します。ウェイトリフティングの選手は、体重の倍近くあるバーベルを持ち上げる瞬間に、血圧が300を超えると言われています。血管が破れてしまわないか見ていてハラハラしますが、競技が終わってしまえば何ともありません。一瞬だけ300を超えることと、常時300を超えていることは違うのです。

救急外来では、「さっき自宅で測ったら血圧が200もあって、びっくりして来ました」という方にしばしばお会いします。そのような時は、落ち着いた状況で再度測り直して、普段通りの値に戻っていれば、そのまま様子を見てもらいます。

血圧は過去の瞬間最大値ではなく、平均的にどの程度高いかが問題です。日々高いままの血圧だと、知らず知らずのうちに脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まってしまいます。

血圧が高いことを指摘されて、良い気分になる人はいません。しかし、患者さんの中には重い病気を発症してから後悔の言葉を述べる方もいます。運動や食生活を変えるだけで、大きく血圧が改善するケースもありますので、高血圧のまま放置してしまっている方はぜひ一度、「血圧マイナス30」の法則を、意識されてみて下さい。

 

* 日本高血圧学会では、血圧ごとの状態を以下のように定義しています。

  • 130-139/85-89:「正常高値」
  • 140-159/90-99:「I度高血圧」
  • 160-179/100-109:「II度高血圧」
  • 180以上/110以上:「III度高血圧」

収縮期血圧、拡張期血圧のいずれかが該当する項目のうち、重い方をとって判定します。


* 本記事は高血圧の危険性について身近に認識してもらうことを目的とした喩え話であり、高血圧症の方が悪いことをしていると見做す意図はありません。また血圧が高い方の中には、本人の意識や努力が不足しているというわけではなく、疾病によってそのようになっている方が相当数いることをご承知下さい。

執筆者

沖山 翔

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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