過多月経の治療は一長一短をふまえて選択を

過多月経は多くの女性を苦しめています。治療のひとつに、子宮内黄体ホルモン放出システムという、薬剤を少しずつ放出する器具を子宮に入れておく方法があります。ニュージーランドの研究班が、これまでに報告された子宮内黄体ホルモン放出システムの効果をまとめて検証し、治療効果は飲み薬よりも強く、子宮内膜アブレーションなどと同程度で、子宮摘出術よりも弱いが、費用対効果においては子宮摘出術に勝ると結論しました。
◆過去の比較研究を検証
研究班は論文データベースなどから、過多月経の治療として、子宮内黄体
子宮内膜アブレーションとは、マイクロ波(電子レンジと同じ原理でものを加熱する電磁波)を出す小さい装置を膣から子宮に挿入し、子宮内膜を焼いて破壊することで月経の出血を少なくする治療です。
◆飲み薬よりも効果大、子宮摘出術よりも費用対効果大
調査の結果、集まった報告の内容は以下のようなものでした。
21件のランダム化試験(2082人の女性)が採用された。採用された試験のほとんどが、レボノルゲストレル放出子宮内装置(LNG IUS)を評価しており[...]、LNG IUSについてのみ結論が導かれていた。
7件の研究が、LNG IUSと経口薬治療を比較していた[...]。
LNG IUSは、経口薬と比べて、治療継続2年において、過多月経を減らす効果が[...]より大きく、生活の質が改善された対象者の数がより多かった。
軽度の有害事象(骨盤痛、乳房圧痛、卵巣のう胞)はLNG IUSを使った場合のほうが多かった。
10件の研究が、LNG IUSを子宮内膜破壊術と比較していた[...]。
結果として出血を減らすかどうかについて、これらの研究の示すエビデンスは一貫せず、非常に低い質のものだった[...]。
軽度の有害事象は全体としてLNG IUSに多かったが、1件の研究において、治療後2年での費用対効果が熱アブレーションよりもLNG IUSで高いとされていた。
3件の研究がLNG IUSと子宮摘出術を比較していた。LNG IUSは過多月経を減らすことにおいて子宮摘出術ほどの成果がなかった(高い質のエビデンス)。
LNG IUSを使っていた対象者は10年以内に手術治療を受ける率が高かったにもかかわらず、LNG IUSは子宮摘出術よりも費用対効果が高かった。
このように、検討された子宮内黄体ホルモン放出システムは、
- 飲み薬と比べて
- 過多月経に効果が大きい
- 生活の質が改善する
- 副作用が多い
- 子宮内膜破壊術(子宮内膜アブレーションなど)と比べて
- 過多月経に効果が大きいとする報告と、小さいとする報告がある
- 副作用が多い
- 一部の場合に費用対効果が大きい
- 子宮摘出術と比べて
- 過多月経に効果は小さい
- 費用対効果が大きい
という結果でした。
どんな治療がよりよい治療なのかは、考え方によって変わります。効果が大きいほどよいと思う人がいるかもしれませんし、効果が小さくても副作用が少ないほうがよいと思う人もいるでしょう。また治療を受けるための負担も、それぞれの方法で違っています。
このような比較でさまざまな治療の良い面と悪い面が明らかになれば、治療を選ぶための役に立つかもしれません。
執筆者
Progesterone or progestogen-releasing intrauterine systems for heavy menstrual bleeding.
Cochrane Database Syst Rev. 2015 Apr 30
[PMID: 25924648]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。