認知症の人が運動療法で元気になった
運動が認知症によい影響をもたらすと言われています。この関係については多くの研究がありますが、認知症の治療は変わりつつあり、新しい報告が年々積み重なっています。カナダの研究チームが最新の報告を集め、現状に即して、運動療法が認知症患者の運動能力を改善することを改めて確かめました。
◆過去のランダム化研究を検証
研究チームは、論文データベースから、認知症患者に対する運動療法の効果を調べたランダム化研究を集め、その内容を検証しました。
報告された効果と副作用は統合して評価されました。
◆運動能力に改善あり
集まった研究の内容は次のようなものでした。
合計1,067人の参加者を対象に行われた17件の研究が採用基準を満たした。
運動が認知機能に有益な効果をもたらすという明らかな根拠はなかった。
運動療法が認知症患者のADL(日常生活における身体運動)を行う能力に与える効果は、6件の研究で合計289人の参加者に対して示されていた。
1件の研究では、自宅で認知症介護をしている人の管理のもと、認知症のある家族が運動療法を受けた場合、介護する人の負担が減っていた。
運動療法による神経・精神症状の改善、またはうつ症状の改善を示す証拠はなかった。
これらの結果から、研究チームは「運動療法が認知症のある人のADLを行う能力を改善するかもしれないという有力な根拠がある」と結論しています。ただし統合されたデータの内容にはばらつきがあり、「これらの結果を解釈するうえでは注意して見ることが勧められる」としています。ADL以外で検討された効果については、「ほとんど、あるいはまったく根拠がない」とまとめています。
認知症は高齢者に多く、同時にかかっている病気など全身の健康状態、さらに家族との関係や社会的環境など、症状や治療を左右する要素は多様です。そんな中で、多くの場合を見渡したうえ、運動能力に効果ありとしたこの報告は、複雑な治療を方向付けるヒントになるかもしれません。
認知症のケアに関わっている方は、運動療法を検討するとき、どんなことを考えますか?
執筆者
Exercise programs for people with dementia.
Cochrane Database Syst Rev. 2015 Apr 15
[PMID: 25874613]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。