2015.04.20 | ニュース

筋電義手を使った新たな治療法で腕の機能が劇的に回復

腕機能テストのスコア大幅上昇、神経再建術と筋電義手を組み合わせ

from Lancet

筋電義手を使った新たな治療法で腕の機能が劇的に回復の写真

「腕神経そう」とは、肩の内側にある、腕を動かしたりする神経の集まりのことです。ここを損傷すると、腕が動かなくなるなどの障害が残ることがあります。重症の場合は、身体の他の箇所にある神経や筋肉を移行する再建術しかなく、効果は必ずしも十分ではありません。 今回、オーストラリアのグループが筋電義手を使った治療を行い、その結果を報告しました。

◆筋肉の信号を正確に拾う

2014年4月から2015年5月までに受診した腕神経そう損傷患者3例に対し、神経や筋肉の人工再建を行い、その後の治療は2段階に分けています。

  • 1段階目:筋電義手を使用するために筋電図の信号を測定
  • 2段階目:腕の一部を切断し、筋電図の波形で動く義手を装着し、誤差を徐々に微修正

1段階目で個別に用意されたリハビリテーションを行い筋電図を測定することで、切断した後でも義手を脳がコントロールできるように準備をするのです。

 

◆人工再建後の腕の機能が大幅に回復

【動画URLはこちら】
https://youtu.be/nswpyjm8W9g

今回の治療で患者3例全例で人工義手を使いこなせるようになっており、3ヶ月後に行った腕の機能を調べるテスト(Action Research Arm Test)の平均点は、5.3から30.7に大幅に上昇しました。

そのほかのテストにおいても、同様に大幅な機能の回復が報告されており、治療の効果の高さを証明しています。
 

最近は、日本においても義足などで同様の筋電義肢が用いられてきている背景があり、今回の研究成果は、腕神経そう損傷患者にとって新たな治療の選択肢を生む可能性があります。

執筆者

佐々木 康治

参考文献

Bionic reconstruction to restore hand function after brachial plexus injury: a case series of three patients.

Lancet. 2015 Feb 24.

[PMID: 25724529]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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