分子標的薬(チロシンキナーゼ阻害薬〔ALK-TKI〕)
ALK(未分化リンパ腫キナーゼ)融合遺伝子から作られるタンパク質のチロシンキナーゼ活性を阻害し無秩序な細胞増殖を抑えることで抗腫瘍作用をあらわす薬

分子標的薬(チロシンキナーゼ阻害薬〔ALK-TKI〕)の解説

分子標的薬(チロシンキナーゼ阻害薬〔ALK-TKI〕)の効果と作用機序

  • 細胞増殖に関わるタンパク質の酵素活性を阻害することで、がん細胞の増殖を抑制する薬
    • がん細胞は無秩序な増殖を繰り返したり転移を行うことで、正常な細胞を障害し組織を壊す
    • 細胞増殖の伝達因子となるチロシンキナーゼの一つにALK(未分化リンパ腫キナーゼ)がある
    • ALK遺伝子が他の遺伝子と融合して異常なALK融合遺伝子ができ、この遺伝子からできるタンパク質は無秩序な細胞増殖をおこす
    • 本剤はALK融合タンパク質のチロシンキナーゼ活性を阻害することで抗腫瘍効果をあらわす
  • 本剤は通常、ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺がんに使用する
  • 本剤はがん細胞の増殖などに関わる特定の分子の情報伝達を阻害することで抗腫瘍作用をあらわす分子標的薬となる

分子標的薬(チロシンキナーゼ阻害薬〔ALK-TKI〕)の薬理作用

がん細胞は無秩序な増殖を繰り返し正常な細胞を障害し、転移を行うことで本来がんのかたまりがない組織でも増殖する。

細胞増殖のシグナルを伝達する上で重要となるチロシンキナーゼの一つにALK(未分化リンパ腫キナーゼ)があり、これを作るALK遺伝子が他の遺伝子と融合してしまうと異常な遺伝子としてALK融合遺伝子ができる。この遺伝子からできるタンパク質は内在するチロシンキナーゼを常に活性化することにより、無秩序な細胞増殖がおこる。

本剤はALKに対するキロシンキナーゼを阻害する作用により、発がん性変異体のALK融合タンパク質のチロシンキナーゼ活性を阻害し抗腫瘍効果をあらわし、通常はALK融合遺伝子陽性が確認された切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんに使用する。

本剤はがん細胞の増殖などに関わる特定の分子の情報伝達を阻害することで抗腫瘍効果をあらわす分子標的薬となる。

分子標的薬(チロシンキナーゼ阻害薬〔ALK-TKI〕)の主な副作用や注意点

  • 精神神経系症状
    • 味覚異常、めまい、ニューロパチー、頭痛、不眠などがあらわれる場合がある
  • 消化器症状
    • 吐き気、下痢、便秘、腹痛などがあらわれる場合がある
  • 循環器症状
    • 徐脈、血圧変動などがあらわれる場合がある
  • 間質性肺炎
    • 頻度は稀だがおこることがあり重篤化する場合もある
    • 少し無理をしたりすると息切れがする・息苦しくなる、空咳が出る、発熱するなどがみられこれらの症状が急に現れたり、続いたりする
    • 上記の様な症状はみられた場合は放置せず、医師や薬剤師に連絡する
  • 肝機能障害
    • 倦怠感、食欲不振、発熱、黄疸発疹、吐き気・嘔吐などがみられ症状が続く場合は放置せず、医師や薬剤師に連絡する
  • 血液障害(好中球減少、白血球減少など)
    • 突然の高熱、寒気、喉の痛み、手足に点状出血、あおあざができやすい、出血しやすいなどがみられた場合は放置せず、医師や薬剤師に連絡する

分子標的薬(チロシンキナーゼ阻害薬〔ALK-TKI〕)の一般的な商品とその特徴

ザーコリ

  • クリゾチニブ製剤
  • 視覚障害に関する注意
    • 視力障害、光視症(眼に光が当たってないのに光の点滅を感じる)、霧視(霧がかかった様に見える)、複視(二重に見える)などがあらわれる場合がある
    • 本剤を服用中に自動車の運転等危険を伴う機械の操作をする際には十分注意する

アレセンサ

  • アレクチニブ製剤
  • 味覚障害に関する注意
    • 神経系の副作用の中でも、味覚障害は比較的あらわれやすいとされる

ジカディア

  • セリチニブ製剤
  • 既存の同系統の薬で効果不十分であったり、効果があったものの耐性があらわれてしまった場合などにおいても治療効果が期待できる

ローブレナ

  • ロルラチニブ製剤
  • 既存の同系統の薬で効果不十分であったり、効果があったものの耐性があらわれてしまった場合などにおいても治療効果が期待できる

アルンブリグ

  • ブリグチニブ製剤
    クリゾチニブなどの治療後に耐性があらわれてしまった場合などへの有用性も考えられる