バルビツール酸系抗てんかん薬
中枢神経系に作用し神経細胞の興奮抑制作用などにより、抗けいれん作用、催眠・鎮静作用などをあらわす薬

バルビツール酸系抗てんかん薬の解説

バルビツール酸系抗てんかん薬の効果と作用機序

  • 中枢神経系に作用し神経細胞の興奮抑制作用などにより、抗けいれん作用、催眠・鎮静作用などをあらわす薬
    • てんかんは脳内神経の異常な興奮などによっておこるとされ、その症状はけいれんや体のこわばりなど多種多様となる
    • 脳内における神経細胞で塩化物イオン(Clイオン)は抑制性のシグナルとして作用する
    • 本剤はClイオンの神経細胞内への流入を促進し、神経細胞の興奮を抑える作用をあらわす
  • 本剤の中にはてんかん治療の他、不眠症、不安緊張状態の鎮静などで使用する薬剤もある

バルビツール酸系抗てんかん薬の薬理作用

てんかんは脳内で神経が異常に興奮することなどによっておこり、その症状は全身のこわばりやけいれん、意識の消失、体の一部に症状があらわれるなど多種多様となる。

脳には神経細胞が集積していて、神経伝達物質などの作用により神経細胞が興奮しシグナルが伝わり神経伝達がおこる。神経の興奮伝達に関わる物質としてナトリウムイオン(Na+)、カルシウムイオン(Ca2+)、塩化物イオン(Cl)などがあり、その中でもNa+やCa2+は興奮性のシグナルとして作用し、Clは抑制性のシグナルとして作用する。脳内においてClの通り道であるCl-チャネルを含むGABA受容体-BZD受容体-Cl-チャネル複合体へClの流入が促進すると神経興奮が抑制される。

本剤はGABA受容体-BZD受容体-Cl-チャネル複合体におけるCl-チャネルを開口し、この神経細胞内へのClの流入を促進することにより神経興奮を抑制する。本剤はこれらの中枢神経系の抑制作用により抗けいれん作用、催眠・鎮静作用などをあらわし、てんかん発作の治療薬として使用される他、薬剤によっては不眠症、不安緊張状態の鎮静、自律神経発作、精神運動発作などに使用する場合もある。

バルビツール酸系抗てんかん薬の主な副作用や注意点

  • 精神神経系症状
    • 眠気、めまい、頭痛、運動失調などがあらわれる場合がある
  • 依存性
    • 連用によって薬物依存が生じる場合があるため、観察を十分に行い用法・用量などを守り適切に使用する
  • 皮膚症状
    • 頻度は非常に稀だが、中毒疹様発疹などがあらわれる場合があり、紅斑水疱びらん、そう痒感などがみられた場合は放置せず、医師や薬剤師に連絡する
  • 肝機能障害
    • 頻度は非常に稀である
    • 倦怠感、食欲不振、発熱、黄疸発疹、吐き気などがみられ症状が続く場合は放置せず、医師や薬剤師に連絡する

バルビツール酸系抗てんかん薬の一般的な商品とその特徴

フェノバール

  • フェノバルビタール製剤
    • てんかんのけいれん発作の他、不眠症、不安緊張状態の鎮静などでも使用する
  • 剤形に錠剤、散剤(原末、散10%)、液剤(エリキシル)などがあり用途などによって選択が可能

ワコビタール

  • フェノバルビタールナトリウムの坐剤
  • 主に小児に対して催眠、不安・緊張状態の鎮静、熱性けいれん及びてんかん発作の改善などの目的で使用する

プリミドン

  • 本剤の成分(プリミドン)の抗けいれん作用に加え、プリミドンが体内で代謝され、一部がフェノバルビタールなどの活性代謝物となり抗けいれん作用をあらわす
  • 剤形に錠剤と細粒剤があり、嚥下能力などに合わせて選択が可能