いでんせいすいえん
遺伝性膵炎
遺伝によって膵炎が起こる病気。幼児期から急性膵炎をくりかえし、やがて慢性膵炎に進行する
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最終更新: 2021.03.31
遺伝性膵炎の基礎知識
POINT 遺伝性膵炎とは
遺伝が原因となって膵臓に炎症が起こる病気です。幼少期から腹痛、吐き気、嘔吐、下痢などの急性膵炎の症状をくりかえし、次第に膵臓にダメージが蓄積して慢性膵炎に進行します。遺伝する病気であり、血縁者に膵炎を経験した人がいることが多いです。慢性膵炎を引き起こす他の原因(大量飲酒やIgG4関連疾患など)がないことを確認したうえで診断されます。根本的な治療法はなく、痛みに対する治療や、消化吸収不良に対する治療を行います。糖尿病を発症する人が多く、また膵がんになるリスクが高いと言われています。遺伝性膵炎が疑われる人は消化器内科または小児科を受診してください。
遺伝性膵炎について
- 遺伝が原因でくり返し膵臓に
炎症 が起こり、膵臓が傷んでしまう病気- 最終的には慢性膵炎の状態になり、膵臓が十分に働かなくなる
- 10歳以下の幼少期に
発症 することが多い - 急性膵炎のような症状(腹痛、吐き気、嘔吐、下痢など)をくり返す
- 原因となる遺伝子は、カチオニックトリプシノーゲン(PRSS1)遺伝子の異常が約4割、膵分泌性トリプシンインヒビター(SPINK1)遺伝子の異常が約3割、原因不明が約3割
- PRSS1遺伝子の異常があると消化
酵素 トリプシンが活性化され、膵臓自身を消化してしまうことで膵炎が起こる - PRSS1遺伝子は
常染色体優性遺伝 する(患者の子供は50%の確率で遺伝性膵炎になる)
- PRSS1遺伝子の異常があると消化
- 血縁者の中にも膵炎をくり返す人が見られることがある(家族歴)
- まれな病気で、難病医療費助成制度の対象疾病(指定難病)になっている
遺伝性膵炎の症状
遺伝性膵炎の検査・診断
- 膵臓の
炎症 の程度や範囲を調べる- 血液検査(アミラーゼ、リパーゼ、エラスターゼ1 など)
- 尿検査(アミラーゼ)
- 画像検査(
腹部超音波検査 、CT 検査、MRI 検査 など)
- 膵臓の分泌機能が低下していないか調べる
- 膵外分泌機能検査(BT-PABA試験 など)
- 遺伝子異常の有無を調べる
- PRSS1遺伝子変異
- SPINK1遺伝子変異
- 通常の医療機関では行えず、専門病院で研究として検査されている場合が多い
- 急性膵炎をくり返す、または慢性膵炎の状態になっている人で、次の①に当てはまる場合、または②、③、④の全てに当てはまる場合に遺伝性膵炎と診断される
- ①カチオニックトリプシノーゲン(PRSS1)遺伝子の異常がある
- ②血縁者の2人以上が膵炎になったことがある
- ③少なくとも1人の膵炎患者には、大量飲酒など慢性膵炎の原因になるものがない
- ④血縁者の単一世代に複数の膵炎患者がいる場合、少なくとも1人が40歳以下で発病している