きゅうせいおうだんせいせきずいえん
急性横断性脊髄炎
背骨の中にある脊髄に炎症が起こる病気。多発性硬化症や感染症、自己免疫疾患が原因と考えられている
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最終更新: 2022.02.25
急性横断性脊髄炎の基礎知識
POINT 急性横断性脊髄炎とは
背骨の中にある脊髄(脳とつながる神経の束)に炎症が起こる病気です。身体を細菌やウイルスから守る免疫機能の異常によって起こる自己免疫疾患の1つと考えられています。多発性硬化症や感染症、自己免疫疾患、薬剤などが原因になります。発症早期にはおなかや背中の痛み、感覚異常(しびれる、ちくちくする)などの症状が見られることが多く、引き続いて下半身の筋力低下や排尿障害(尿が出にくい)などの症状が現れます。診断のために、MRI検査や髄液検査が行われます。ステロイド薬や免疫抑制剤による薬物治療や血漿交換を行います。急性横断性脊髄炎が疑われる人は神経内科を受診してください。
急性横断性脊髄炎について
- 背骨の中にある、脳からの指令を伝達する太い神経を脊髄と呼ぶ
- 脊髄の髄節(脊髄を輪切り状に区切った区画)に急性の炎症が起こる病気
- 炎症が起こる場所は胸髄が多い
- 感染症、神経疾患(多発性硬化症、視神経脊髄炎)、自己免疫疾患(全身性エリテマトーデス、血管炎)、薬剤、ワクチンなども急性横断性脊髄炎の原因になる
- 免疫(身体の中の異物を攻撃するシステム)が誤って自分の脊髄を攻撃してしまう自己免疫疾患の一種と考えられている
- 米国では年間約1,400人が急性横断性脊髄炎と診断され、約34,000人が病気に伴う機能障害を持つと言われている
- 10代と30代の発症が多い
- 性別による頻度の違いはない
急性横断性脊髄炎の症状
- 主な症状:次の症状が数時間から数日の間に起こる
- 胸やおなかが帯状に痛む、しびれる、ちくちくした感じがする
- 下半身の筋力低下
- 尿が出にくくなる
- さらに悪化すると見られてくる症状
- 感覚がなくなる
- 麻痺が起こる
- 尿が出ない(尿閉)
- 便を失禁する
- 脊髄のどの場所に炎症が起こっているか、炎症がどのくらい強いかによって症状が異なる
急性横断性脊髄炎の検査・診断
- MRI検査:脊髄に炎症が起こっているかを調べる
- 髄液検査:髄膜炎や脳炎が起こっていないかを調べる
- 血液検査:急性横断性脊髄炎の原因になる感染症、神経疾患、自己免疫疾患がないかを調べる
急性横断性脊髄炎の治療法
- 原因が見つかった場合には原因となる病気に対する治療を行う
- 薬物治療
- ステロイドパルス療法:発症直後は大量のステロイド薬を点滴で短期間(3日間程度)使用する
- ステロイド薬:ステロイドパルス療法が終了した後もステロイド薬を内服で継続し、少しずつ減量していく
- 免疫抑制剤:ステロイド薬で効果が不十分な場合やステロイドを減量する目的で使用する
- 血漿交換:血液透析の装置を利用した治療
- 血液の中にある炎症の原因となる物質を取り除く
- リハビリテーション
- 麻痺や感覚異常がある場合、麻痺を改善させたり日常生活での動作を訓練するためにリハビリテーションを行う
- 薬物治療
- 治療成績と予後
- 多くの人は数ヶ月から数年かかって回復する
- 約40%の人には筋力低下や排尿障害などの障害が残る
- 病状の進行が速い人は治療成績が良くないと言われており、車椅子や寝たきりの生活になる人もいる
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