咳喘息の人が気をつけるべきことは?
咳喘息(せきぜんそく)とは、
目次
1. 咳喘息になったら運動はできないのか?
運動は全身の筋肉はもちろんですが、心臓や肺にも負担をかけます。なので、重症度にもよりますが咳喘息の患者さんは運動をする際の注意点に関して、いろいろ知識を持っておくと良いと思います。運動は体に負担をかけるのは事実ですが、だからと言って全く運動をしないことが健康に良いとは考えられません。
以下ではマラソンや水泳を主な例として注意点を解説します。咳喘息に限定して行われた研究は乏しいので、以下の説明は基本的に本格的な気管支喘息に対するデータを元にしていますが、咳喘息にもそのまま当てはまるものと考えて良いでしょう。
マラソンは咳喘息に良い?
全ての咳喘息患者さんで運動時に咳発作が起こる訳ではありませんが、咳喘息患者さんで運動時に咳が悪化することを自覚している方は多くいらっしゃいます。これは空気の通り道である
残念ながらマラソンなどの走る競技では運動誘発気管支収縮は起こりやすいことが分かっています。喘息持ちのトップアスリートも多くいるので、決して咳喘息や気管支喘息の患者さんにはランニングができないというわけではありません。しかし一般的には、マラソンは咳喘息に良い運動とは言いがたい、といえると思います。咳喘息があって走る競技をしたい方は、どうやって悪化に備えるかを主治医とよく相談したほうがいいでしょう。
参考文献
・Middletons Allergy : Principles and practice. 6th ed. Philadelphia ; Mosby : 2003, p1323-32.
水泳は咳喘息に良い?
気管支の乾燥が運動誘発気管支収縮の
しかし、やはりオリンピック選手を調べた研究では、水泳選手は一般の人よりも喘息の人が多いことが分かっています。水泳自体が咳喘息に良い運動であると積極的にお勧めすることはできないでしょう。水泳を続けたい方は主治医に希望を伝えたうえで、咳喘息の悪化に備える方法も相談しておくことをお勧めします。
参考文献
・Allergy. 1998 ; 53 : 346-52.
・Middletons Allergy : Principles and practice. 6th ed. Philadelphia ; Mosby : 2003, p1323-32.
咳喘息治療中はドーピングに注意?
アスリートには喘息患者さんが多いことが分かっています。アスリートの喘息も基本的には一般的な喘息と同じような方針で治療をするのですが、咳喘息や気管支喘息の治療では
ロイコトリエン受容体拮抗薬、テオフィリン薬などは問題なく使用可能です。β2刺激薬は吸入薬に関しては使用可能ですが、種類によっては事前に除外措置申請が必要になります。内服や貼付剤のβ2刺激薬は使用が禁止されています。ステロイド薬は吸入薬に関しては検査時に申告すれば使用可能ですが、
このように世界ドーピング防止規定で喘息治療薬に関しては定められていますが、かなり煩雑ではあるので、ドーピング検査を受けるようなアスリートの方は主治医と十分に相談しておくことが必要になると思います。
2. 咳喘息になったら禁煙したほうが良いのか?
禁煙したほうが良いのは患者さんにも分かりきっていることでしょうが、改めてタバコと咳喘息の関係に関して説明します。
喫煙は咳喘息になってしまう原因にも、咳喘息患者さんが咳発作を起こしてしまう原因にもなると考えられます。
また、本格的な気管支喘息に関してのデータですが、親が喫煙しているかどうかは子どもの喘息
このように咳喘息、気管支喘息にとってタバコを避けるべきなのは明らかで、患者さん自身も理解しているケースがほとんどです。
それでもタバコをやめられないのはなぜでしょうか。喫煙習慣にはニコチン依存症という薬物依存症の側面があります。ご自身の強い意志で禁煙できる方は素晴らしいですが、タバコを吸ってしまうということは薬物依存症という病気のひとつと考えて、医療機関を受診して、医療者と一緒に禁煙してみてはいかがでしょうか。
参考文献
・Allergy. 2012 ; 67 : 653-60.
・Am Rev Respir Dis. 1992 ; 145 : 1136-41.
3. 咳喘息になったら禁酒した方が良いのか?
飲酒そのものが新規に咳喘息を発症する原因になるかどうかは分かっていません。
しかし、もともと咳喘息にかかっている患者さんの一部では、飲酒により咳喘息症状が悪化すると考えられます。日本人はアルコールを分解する
参考文献
・渡辺 尚, アルコール (飲酒) 誘発喘息の発症機序に関する研究 : 特にアセトアルデヒドとの関係について, アレルギー. 1991 ; 40 : 1210-7.
4. 咳が出てもどれくらいなら様子をみてよいものなのか?
一般的な風邪(急性上気道炎)でも数日から1週間くらいは咳が続く、ということは皆さん経験されているでしょう。もともと何か重い病気をもっているような方でなければ、風邪でクリニックや病院をその都度受診する必要はありません。ただ、咳が2週間から3週間以上続いてくるとなれば、普通の風邪以外に何か咳を長引かせる要因が隠れていることが多くなります。
上記の理由から、咳以外に目立った症状がないのであれば、まずは2週間から3週間程度、様子をみてみることは妥当だと考えられます。2週間から3週間を超えてくるようであれば、医療機関を受診して、咳喘息をはじめとした何か風邪以外の原因がないか調べてみるのがよいでしょう。
もともと咳喘息の患者さんであれば、咳が2週間から3週間を超えてくるようであれば、治療強化の相談などのために、かかりつけの医療機関を受診したほうがよいでしょう。
ただし、2週間から3週間くらいというのは1つの目安でしかありません。2週間から3週間以内の咳症状のほとんどは風邪でしょうが、咳を伴うどのような重大な病気も発症初期にはその期間に含まれるわけです。特に気になる症状があればやはり様子をみるよりは医療機関にかかって頂いた方が安心です。以下に重い病気を疑わせる症状の例を挙げます。
- 5日間以上発熱が続いている
- 息苦しさが強い
- 喉が今までに無いくらい痛い
- 胸がとても痛い
血痰 がでる
ほかにも耐えられないほどの症状や経験したことのない症状があれば受診をお勧めします。
5. 咳喘息は何科にかかればよい?
咳喘息は非常に患者さんの数も多い病気なので、内科のあるクリニックや病院であれば基本的に問題なく診てもらえるはずです。特に専門ということになると呼吸器内科になります。
治療に難渋するケースや、他の病気との区別が難しいケースなどでは、呼吸器内科医にかかることが特に望ましいといえます。ただ、どの内科にかかっても、そちらの内科の先生で対応が難しければ適切な呼吸器内科のある医療機関に紹介してもらえるはずですから、はじめて受診するときにはこだわりすぎずに、通いやすくて気に入ったところに行かれるのが良いかと思います。
6. 呼吸困難の際にはどうしたら良いか?
まず前提として咳喘息はしつこい咳を唯一の症状とする病気であり、目立った呼吸困難(息苦しさ)は伴いません。つまり呼吸困難に陥っている、という感じがあるのであれば、咳喘息というよりは本格的な気管支喘息になってしまっている可能性の方が高いでしょう。もちろん、咳喘息や気管支喘息以外にも、咳をしすぎて肺が破れてしまっている(気胸)、肺炎になっている、など呼吸困難を起こしている原因はいろいろありえます。
呼吸というのは人間にとって非常に大事な活動であり、その呼吸に支障を来している呼吸困難感という症状には重大な病気が隠れていることも少なくありません。なので、今までに無いような呼吸困難を感じた場合には緊急で医療機関を受診されることをお勧めします。気管支喘息などでかかりつけの医療機関がある場合には、呼吸困難になったときの対処法および受診すべきタイミングを事前に担当医に確認しておくのがベストでしょう。