Beta ツツガムシ病のQ&A
ツツガムシ病の原因、メカニズムについて教えて下さい。
ツツガムシ病の病原菌であるO.tsutsugamushiは、ツツガムシというダニの一種と共生しており、これと共生しているツツガムシに刺咬されることで人の体内に入ってきます。人体内に侵入した後、O.tsutsugamushiが人間の細胞の中に寄生すると感染が成立します。
ツツガムシ病は、どのくらいの頻度で起こる病気ですか?
古く病気は恙(つつが)と言われていました。当時から咬まれると病に侵される虫がいることは認識されており、これを恙虫(つつがむし)と呼んでいました。こうして昔から認知されていたツツガムシ病も、ここ最近は発症数が減少しつつありますが、現在でも国内で年間400例程度発症しています。東北地方では春と秋に、その他の地域では秋に多く発症しています。
ツツガムシ病と重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の違いはなんですか?
ツツガムシ病の原因となるダニはツツガムシですが、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)はマダニによって媒介されます。また、SFTSは原因微生物も細菌ではなくウィルスと分かっています。主な症状は発熱・嘔吐・下痢・腹痛で、死亡する例も多いので非常に注意が必要です。(2016年1月現在で発症者169名中の45名が亡くなっています。)
ツツガムシ病は、他人にうつる病気ですか?
野山や田畑にいるツツガムシが媒介して人に感染させますが、基本的に人から人へ感染することはありません。ただし、過去にペットについたツツガムシが媒介になった事例はあります。
ツツガムシ病は、遺伝する病気ですか?
遺伝の報告はなく、これを心配する必要はありません。
ツツガムシ病は、どんな症状で発症するのですか?
ツツガムシに咬まれた後に4-14日程度の潜伏期間を経て、熱・頭痛・悪寒戦慄が出現します。熱は38-39度の高熱となり、その後37度台とを行き来することが多いです。(弛張熱)また、発熱とともに淡い不整形の紅斑が体幹部を中心に手足に広がっていきます。ただ、この皮疹は手のひらには出現しないことがほとんどで、手掌部湿疹が見られる日本紅斑熱と鑑別する際に有用です。他覚的な所見としては、発熱・発疹・刺し口が三兆候と考えられています。これを踏まえますと、ツツガムシ病を疑った場合に刺し口を探すことは非常に重要となります。刺し口の性状は、10㎜程度の黒色のかさぶたとその周囲の発赤・膨隆が特徴的です。
ツツガムシ病の、その他の症状について教えて下さい。
刺し口周囲のリンパ節(付属リンパ節)の腫大はほぼ必発で、圧痛も伴うことがほとんどです。全身のリンパ節腫脹も感染した約半数の方に起こるといわれています。
ツツガムシ病が重症化すると、どのような症状が起こりますか?
肺炎のような症状、脳炎による意識朦朧、播種性血管内凝固症によるアザや多臓器不全をきたすことがあります。
ツツガムシ病は、どのように診断するのですか?
まずは症状からツツガムシ病を疑います。症状のある患者に対して検査を行い、これが陽性であった場合はツツガムシ病と診断します。
ツツガムシ病の検査について詳しく教えて下さい。
血清検査を行います。これはツツガムシ病の病原体の検出・遺伝子検査・病原体に対する抗体の検出を目的としたものです。
ツツガムシ病と診断が紛らわしい病気はありますか?
ツツガムシ病は全身に炎症を及ぼす疾患です。先ほど述べた日本紅斑熱以外にも、感染症(ウィルス感染や感染性心内膜炎や菌血症等)や薬剤性疾患や悪性疾患(悪性リンパ腫等)や膠原病といった全身症状をきたす疾患との鑑別が必要になります。
ツツガムシ病の治療法について教えて下さい。
ミノマイシンというテトラサイクリン系抗菌薬を用いて治療します。アレルギー等でこれを使えない場合はクロラムフェニコールという抗菌薬を用います。
類似疾患の日本紅斑熱では有効であるニューキノロン系抗菌薬(ex.クラビット等)は無効ですので注意が必要です。
ツツガムシ病の治療薬は、生涯飲み続けることになるのですか?
一生飲む必要はありません。
ツツガムシ病では入院が必要ですか?通院はどの程度必要ですか?
感染初期や状態が安定している場合は、必ずしも入院が必要ではありません。ただ、脱水をきたしていたり、衰弱している場合は、入院加療が必要と考えられます。
ツツガムシ病は再発を予防できる病気ですか?
残念ながら予防に有効なワクチンはなく、感染経路を断つ意味で、ダニの吸着を防ぐことが最も重要です。
ツツガムシ病に関して、日常生活で気をつけるべき点について教えて下さい。
発生時期を知り汚染地域に立ち入らないこと、立ち入る際にはダニの吸着を防ぐような服装をすること、作業後には入浴し吸着したダニを洗い流すことを行ってください。
ツツガムシ病は完治する病気ですか?あるいは、治っても後遺症の残る病気ですか?
基本的に完治します。ただ、重症化して脳炎をきたした場合は後遺症が残る可能性もありますので、早期の診断及び治療が必要です。