けいどにんちしょうがい(えむしーあい)
軽度認知障害(MCI)
物忘れなどの認知症のような症状があるが、認知症の診断基準を満たしていない状態。認知症に至る前段階と考えられている
9人の医師がチェック 55回の改訂 最終更新: 2017.12.06

Beta 軽度認知障害(MCI)のQ&A

    軽度認知障害(MCI)とはどのような病気ですか?

    軽度認知障害(mild cognitive impairment; 以下MCI)とは、軽度の認知機能障害があるものの、認知症というほどではなく、そのほかの病気にも合致しない患者を分類するための概念として当初提唱されたものです。現在では、認知症(特にアルツハイマー病)の前段階としてとらえられるようになってきています。

    「前段階」とは言え、MCIになれば近いうちに必ず認知症になるという訳ではありません。ある報告では、MCIと診断されてから4年以内に認知症になった方は約半数とのことです。裏を返せば残り半数の方は認知症にはなっていません。MCIの状態のまま踏みとどまる方もいらっしゃる印象を受けています。

    軽度認知障害(MCI)はどのような症状で発症するのですか?

    この質問にお答えするには、まず認知機能の障害とはどのようなものかを詳しく知っていただく必要があります。代表的なものは「物忘れ」になるのですが、ここではもう少し詳しく見ていきます。

    • 新しい情報を取り込んで思い出す能力の障害:
      • 同じ質問や会話を繰り返す、約束を忘れる、よく知っている道で迷う、など。物忘れといっても昔のことはよく覚えているのに新しいことを覚えられないというのが認知機能障害を調べる上で重要になってきます。
    • 推論や複雑な課題への対処や判断の障害:
      • 金銭管理が出来ない、適切な決定が出来ない、複雑または経時的な活動を計画できない、など。「複雑または経時的な活動」と言ってもイメージがつかみにくいでしょうが、料理が好例です。料理の際には経時的にいくつかの行動を計画していく必要がありますが、それができなくなり、簡単な料理しか作れなくなったり、料理をしなくなったりするようになります。
    • 視空間能力の障害:
      • 顔やよく使用する物品を認識できない、視力に問題がないのに目の前にあるものを見つけることができない、など。
    • 言語機能の障害:
      • よく使う言葉が思い出せずに会話がとまってしまう、言葉を間違えてしまう、など。
    • 人格、行動または態度の変化:
      • 気分の変動、意欲の低下、ひきこもり、反社会的な行動(万引きなど)など。

    ここでは分かりやすくするために日常生活に支障をきたすまで症状が進むとどのようになるか書きました。MCIではここまで症状が進まず、自分で出来るけれども以前よりも効率が悪くなり時間がかかってしまうようになる、といった程度になります。

    軽度認知障害(MCI)は、どのように診断するのですか?

    認知症と同じく、その段階での患者さんの症状を本人・家族からよく聞いて、MCIに該当するような症状がないかを考えることが一番重要です。料理や買い物などに、これまでよりも効率が悪く時間がかかるようになっているが、なんとか家族など他の人の助けを借りずに一人で出来ている、というのが簡単な目安でしょうか。あくまで認知症の前段階、という位置づけなので、認知症というほどには症状が進んでいないことを確かめることも重要です。

    診察としては問診のほかに改訂長谷川式認知症スケールやミニメンタルステート検査といった認知機能の質問表検査を行います(問診の中に組み込まれていることがあります)。

    軽度認知障害(MCI)の治療法について教えて下さい。

    軽度認知障害の段階で認知症の薬(ドネペジル、メマンチンなど)を使用するべきかどうかについては一定した意見はありません。ドネペジルを使用すると認知機能は改善し、認知症に移行した人の割合が少なくなったとする報告もありますが、決定的な証拠はないのが実情です。
    認知症の薬を使用して症状がよくなる方も確かにいらっしゃるのですが、中には不安や焦燥が強くなってしまうなど逆効果となってしまう方もいらっしゃるようです。それぞれの患者さんで効果のあるなしは違うので、ご本人やご家族の希望にあわせ、薬を試してみる場合はかえって症状が悪くなってしまわないかどうか注意深く見定める必要があると考えられます。

    軽度認知障害(MCI)とアルツハイマー病は違うのですか?

    現在では、MCIはアルツハイマー病の前段階としてとらえられています。要するに、認知機能を調べてみると健常人に比べて下がっているのは間違いないものの、アルツハイマー病というほどには下がっていない、ということです。では、アルツハイマー病の前段階であるところのMCIとアルツハイマー病はどのように区別されているのかといいますと、日常生活を送る際に支障があるかどうか、という点が大切になります。

    アルツハイマー病をはじめとする認知症では日常生活を送る際に支障が出ているというのが大きな指標です。MCIでは認知機能は低下しているものの日常生活はなんとか自立しているというようなイメージを持っていただければよいでしょう。

    よくお年寄りについて「年相応に物忘れがある」という言い方をしますが、そういう方は大抵MCI(もしくは認知症の診断がつく方もいらっしゃいますが)と言えるのではないかと思われます。

    軽度認知障害(MCI)の、その他の検査について教えて下さい。

    必要があれば、頭部CT/MRIや脳血流SPECT、VSRADなどの画像検査を行います。また、髄腋検査といって背中に針を刺して(腰椎穿刺)髄腋をとり、その中に含まれる物質(アミロイドやタウタンパク)を測定することもあります。これらの検査は診断に必須ではありませんが参考になります。

    軽度認知障害(MCI)に関して、日常生活で気をつけるべき点について教えて下さい。

    薬を試してみるのも一つですが、人とよく話しをしたり、趣味を楽しんだり、家の中に閉じこもってないで外出したり運動したりするのも認知症に進行するのを防ぐ上では非常に重要だと思います。こういったことをすれば必ず認知症への進行を抑えられる、というわけではないのですが、少なくとも遅くすることが出来る可能性があります。
    また専門医を定期的に受診し、症状が進行していないかどうかチェックしてもらうことは非常に重要だと思います。