のうしんとう
脳しんとう
頭部へ大きな衝撃が加わることによって、意識消失や嘔吐、しびれなどの症状が一時的に起こる状態
10人の医師がチェック 115回の改訂 最終更新: 2018.02.21

Beta 脳しんとうのQ&A

    脳しんとうとは何ですか?

    脳しんとうは「外傷によって引き起こされた脳の機能障害で、標準的な画像検査で構造的な障害を認めないもの」と定義されています。しかし定義には曖昧な部分があり、実際に医師が脳しんとうを診断する上で明確な基準があるわけではありません。

    脳しんとうとはざっくりと、「頭を打った後、意識消失や意識障害(ぼーっとしていたり、会話が成り立たなかったり、呼びかけに応じない状態)、頭を打つ前後の記憶がないなどの症状があった、あるいは続いているけれども、頭のCTやMRIで異常が写らない状態」と捉えることができます。ほとんどの症状は一時的なもので、時間と共に改善します。

    脳しんとうはどんな症状で発症するのですか?

    受傷時に一時的な意識消失を起こしたり、受傷直後から意識障害(ぼーっとしていたり、会話が成り立たなかったり、呼びかけに応じない状態)や健忘(受傷前後の記憶がない)が出現します。

    その後しばらく続く症状として、頭痛、吐き気・嘔吐、気分不良、めまい、ふらつき、不眠、記憶力の低下、集中力の低下、気分の変動(抑うつ状態、イライラ、不安)などがあります。

    どの症状がどのくらいの強さで出現するかは、個人・状況によって異なります。

    脳しんとうはどのように診断するのですか?

    脳しんとうの診断をする上で明確な基準があるわけではなく、診断が難しい場合も多いです。受傷の仕方、受傷時の症状とその後の変化、診察時の症状を診て、必要があれば頭のCTやMRIでは異常がないことを確認して「脳しんとう」と診断をつけます。

    スポーツにおける脳しんとうにおいては、“SCAT”とよばれる脳しんとうの評価項目が広く用いられており、インターネットで日本語版も自由に利用することが出来ます。ただしSCATも基準点(◯点だったら脳しんとうである、◯点だったらスポーツしてはダメ、など)は定まっておらず、あくまで目安です。それだけで診断を確定するものではありません。脳しんとうの診断は難しく、最終的には専門の医師が行います。

    脳しんとうを起こした後の治療法について教えて下さい。

    一番大切なのは、頭痛や吐き気、ふらつきなどの脳しんとうの症状がなくなるまで安静にして身体を休めることです。

    症状が悪化しない範囲で日常生活を送る分には問題ありませんが、心拍数が上がるような活動は控えてください。またテレビを見る、ゲームをする、文字を読む、勉強するなど頭を使う活動は脳しんとうの症状を悪化させる可能性があるので、そういった活動で症状が悪化するならば控えたほうがいいです。場合によっては学校も休みましょう。

    脳しんとうの怖いところは何ですか?

    脳しんとうの中には、意識消失がないからと見逃されているものがたくさんあります。そして脳しんとうを繰り返すと重篤な状態になる可能性が高まり、また後遺症が残る可能性があります。

    脳しんとうを起こして数日以内だと脳が回復しきれておらず、衝撃に対して弱い状態になっています。数日以内に再度頭を打った場合、「セカンドインパクトシンドローム」を引き起こす可能性があります。軽い衝撃でも一気に脳が腫れて、重篤な意識障害(昏睡状態)、神経症状が出現する状態のことで、最近注目されています。

    また「脳震盪後症候群」といって脳しんとうの症状が数か月、あるいは1年以上続くことや、「慢性外傷性脳症」といって、繰り返す脳しんとうで脳へのダメージが蓄積されることで将来認知機能低下や精神症状を起こすことなどについても研究がなされています。

    脳しんとうを起こした後、いつスポーツに復帰できますか?

    まず、脳しんとうの症状(頭痛や吐き気、ふらつき)がある間はスポーツに復帰してはいけません。脳しんとう後は、段階的に体を動かし始めてスポーツに復帰していく方法として段階的競技復帰プロトコル(GRTP)が推奨されています。

    1. 軽い有酸素運動をする
    2. .スポーツ固有の運動をする
    3. コンタクトのない練習ドリルを行う
    4. フルコンタクトの練習を行う

    という段階が設けられています。

    必ず受傷翌日以降、症状が完全に消失してから開始して、一つの段階を実施して症状の出現がなければ、24時間空けて次の段階に進みます。その方法では頭を打ってから試合への完全な復帰までに最短でも5日間が必要です。

    脳しんとうを予防する方法を教えてください。

    • 自転車やバイク、コンタクトスポーツでは自分に合ったヘッドギア、ヘルメットを装着すること
    • スポーツにおいてはプレイヤーが正しい姿勢や動きを身に付け、フェアなプレイをすること
    • 脳しんとうが起きてしまった場合に自分自身、あるいはチームのコーチや監督、トレーナー、スポーツドクターが脳しんとうの可能性を認識して、きちんと評価し、医師の診察を受けること

    以上に加え、十分回復しないうちに再び脳しんとうを起こすことを避けるのが何よりも大切です。二回目以降の脳しんとうは、「セカンドインパクトシンドローム」と言って、命に関わる重篤な状態を引き起こしやすいからです。

    脳しんとうの後遺症が残ることはありますか?

    「脳震盪後症候群」といって脳しんとうの症状が数か月、あるいは1年以上続くことがあります。また「慢性外傷性脳症」は繰り返す脳しんとうによって脳へのダメージが蓄積されることで、将来認知機能低下や精神症状を起こすとされています。アメリカではプロのアメリカンフットボール選手が頭部への衝撃を繰り返した影響で、引退後若くして認知機能が低下するという報告があり、現在研究がなされています。

    どういう時に脳しんとうを疑ったらいいですか?

    脳しんとうは見過ごされていることが非常に多いので、まずは脳しんとうを疑うことが大切です。脳しんとうの症状は頭痛やめまい、吐き気など本人にしか分からない症状が多く、なるべく周りの人も分かる客観的な症状で判断することも必要です。例えば「意識消失があった」、「頭を打つ前後の記憶がない」、「ぼーっとしている」、「呼びかけに応じない」、「日にちや今いる場所がわからない」、「指示に従うことができない」、「歩くとふらつく」、「吐いた」などの症状があれば脳しんとうが疑われます。スポーツ中であればプレイには戻らず、病院を受診してください。

    なお、頭をぶつけて数分以上意識が戻ってこない、手足がけいれんしている、どこかの手足が動かないなどの症状があった場合、急性硬膜下出血や外傷性脳出血など、より重篤な頭部外傷が疑われます。

    脳しんとうは治りますか?どのくらいの期間で治りますか?

    意識消失、意識障害は数分から数時間で改善、消失します。ほとんどの場合、頭痛や吐き気、ふらつきなどの症状は受傷して10日間以内に消失します。ぼーっとしたり、集中できない、記憶能力が落ちているなどの脳機能が回復するには、さらに数日から1週間ほど必要になることが多いです。稀に脳しんとうの後の症状が数か月、あるいは1年以上続く人もいます。

    脳しんとうを起こしても意識消失がなければ大丈夫ですか?

    意識消失を伴う脳しんとうはより重症で、治るのにも時間がかかりやすいです。しかし意識消失がなくても症状が強い人や、治りにくくて長引く人、後で重症化する人がいます。

    意識消失だけで重症度を判定することはできず、意識消失がないからといって甘く見ることはできません。脳しんとうを起こしたら、しっかりと休養や観察を行っていく必要があります。

    脳しんとうの治療薬について教えてください。

    脳しんとう自体に対する治療薬はありません。回復には安静が第一です。

    ただし頭痛や吐き気、不眠などの各症状に対しては、薬を使うことが出来ます。

    脳しんとうの時、日常生活で気をつけることは何ですか?

    脳しんとう後、一番大切なのは安静にして身体、頭を休めることです。症状が悪化しない範囲で日常生活を送る分には問題ありませんが、心拍数が上がるような活動は控えてください。またテレビを見る、ゲームをする、文字を読む、勉強するなど、頭を使う活動も控えた方が良いです。

    頭痛などの症状が悪化、再発するようであれば、身体や頭を使いすぎている可能性があるので、より安静に気を払うするようにしましょう。

    頭を打つと、脳しんとうの他にどういう病気になりますか?

    まず、いわゆるたんこぶである皮下血腫や頭蓋骨の骨折があります。さらに、脳挫傷(脳の神経細胞が傷つき、小さな出血や浮腫が起きて、頭のCTやMRIでも変化を確認できる状態)や急性硬膜外血腫、急性硬膜下血腫、外傷性脳出血、外傷性くも膜下出血があります。これらは見た目や頭のCT、MRIで確認、診断できます。

    頭を打って何らかの症状があるけれどもCT、MRIで異常が写らなかったという場合に、脳しんとうと診断されます。

    病院で脳しんとうと言われました。どんな時に再び病院を受診したらいいですか?

    頭痛がどんどん酷くなる時、嘔吐を繰り返す時、けいれんが起きた時、呼びかけても反応が鈍いなど意識状態が悪くなった時、手足の麻痺が出た時など、元々あった症状が明らかに悪くなったり、新しい症状が出現した時に病院を受診してください。

    脳しんとうを疑う時、どういう質問をして確かめたらいいですか?

    「ここはどこ(の競技場)ですか?」 「今は、前半と後半のどちらですか?」 「今スコアは何対何ですか?」 「先週、前回の対戦相手は誰でしたか?」 「前回の試合は、勝ちましたか?」 これらの質問のうち、一つでも答えられないものがあれば脳しんとうが疑われます。必ずプレイには復帰せず、病院を受診してください。

    脳しんとうを起こした後、学校に行っても良いのですか?

    頭痛や吐き気、ふらつきなどの脳しんとうの症状が悪化しなければ、学校に行っても大丈夫です。症状が強い、悪化するようであれば学校を休みましょう。

    一つの目安として、30-45分間読書や勉強で集中できるなら、学校に復帰することを検討します。復帰する際は休み時間を多めにとる、出席する時間・コマ数を少なくするなどの調整を行うことも良しとされています。ただし学校を休みすぎるのも良くないので、一つの目安として5日間の休養をめどに、時間・コマ数の調整をしたりしながら学校に復帰することが勧められます。

    脳しんとうのメカニズムは何ですか?

    頭のCTやMRIでははっきりとした異常が写らなくても、目に見えないくらいの非常に小さなレベルで脳の神経細胞が傷ついている状態です。CTやMRIに異常が写らないので、脳のどの部位が傷ついているのか、はっきりとはわかりません。

    脳しんとうが発症しやすい人はいますか?

    頭に衝撃が加わった場合、誰でも脳しんとうを発症する可能性があります。転倒や交通事故で発症することもありますし、サッカーやラグビー、アメフト、アイスホッケーといったスポーツでは頻繁に見られます。

    数日以内に脳しんとうを一度起こしている人は、2回目の脳しんとうを起こすリスクが2-6倍になると言われています。

    コンタクトスポーツのチーム監督をやっているんですが、試合中に頭を打ったプレイヤーの脳しんとうを起こしたプレイヤーに対してどう対応したらいいですか?

    脳しんとうが疑われるプレイヤーはプレイから離脱させて、その日はプレイに復帰させてはいけません。医師の診察を受けてください。脳しんとう後は、段階的に体を動かし始めてスポーツに復帰していく方法として段階的競技復帰プロトコル(GRTP)が推奨されています。段階的競技復帰プロトコルについては別のQ&Aでも解説していますので、ご覧下さい。

    どういう人が脳しんとうの症状が治りにくい、長引きやすいのですか?

    基本的に最初の症状が強いほど、症状が長引きます。他には「1分以上の意識消失があった人」、「めまいや歩行時のふらつきがある人」、「頭を打って遅れて症状が出てきた人」、「今までに脳しんとうを何回か起こした人」が治りにくく、また症状が長引きやすいです。

    脳しんとうは、どのくらいの頻度で起こる病気ですか?

    病院を受診しない方も多く、また日本では正確な統計もないため、脳震盪の正確な頻度は分かっていません。ラグビーやアメフト、サッカーの試合、柔道やボクシングといったスポーツではしばしば見られ、決してめずらしくない病気です。アメリカの場合、スポーツやレジャー関係の脳しんとうが年間30万件報告されています。見過ごされている脳しんとうが多いことを考慮すると、年間380万件ほどスポーツやレジャー関係の脳しんとうが起きているとの推定もあります。

    脳しんとうと脳挫傷の違いについて教えて下さい。

    脳しんとうと脳挫傷はいずれも頭を打ったことで脳がダメージを受け、意識障害など様々な症状を引き起こす病気です。

    脳しんとうはCT、MRIで異常が写らないのに対して、脳挫傷は小出血、脳の神経細胞の挫滅、浮腫(腫れ)をCT、MRIで確認できます。一般的には脳しんとうの方が軽症で、症状も一時的です。

    脳しんとうでは入院が必要ですか?どれくらい通院すればいいですか?

    多くの場合入院は必要とせず、自宅で安静にして様子を観察していれば大丈夫です。ふらつきや吐き気が強く、帰宅が難しそうであれば少しの間入院することもあります。その後の通院は必要でない場合が多いですが、一週間経っても症状が強く残って改善しないようであれば、もう一度病院を受診することをお勧めします。