脳しんとうの基礎知識
POINT 脳しんとうとは
脳しんとうとは、転んだ時やスポーツ、交通事故などによるケガで頭部への衝撃により脳が大きく揺さぶられ、一時的に起こる脳の機能障害のことです。ラグビーやアメフト、ボクシングなど身体の衝突や衝撃を避けられないスポーツなどでよく起こります。症状としては、意識がなくなる、ぼーっとする、受傷前後の状況を覚えていない、頭痛、吐き気、嘔吐などがあります。診断は受傷時のエピソードや症状をみて行いますが、症状の程度によっては脳や頭蓋骨に病変がないか調べるために頭部CTなどの検査が追加されることもあります。負担のかかる活動を避けて療養することが基本的な治療です。脳しんとう後、再び脳しんとうを起こすとセカンドインパクト症候群といって脳に重大な後遺症が残ることがあります。脳しんとうが心配な人や相談したい人は、救急科や脳神経外科を受診してください。
脳しんとうについて
- 頭を打った後、意識消失や
意識障害 (ぼーっとしていたり、会話が成り立たなかったり、呼びかけに応じない状態)、頭を打つ前後の記憶がないなどの症状があった、あるいはそれらの症状が続いているが、頭部CT検査 などで異常が写らない状態- 急性硬膜外血腫など、脳の
病変 が出来ていると数時間単位で状態が悪化していくため、受傷後は慎重に様子をみる必要がある
- 急性硬膜外血腫など、脳の
- 主な原因
- 転落、転倒
- 自動車事故
- ボクシング、ラグビー、アメフトといったコンタクトスポーツ など
- 米国では毎年400万人近い人がスポーツによる脳しんとうを起こしていると言われている
脳しんとうの症状
- 頭部外傷後の意識消失、
意識障害 - 意識がない
- ぼーっとしている
- 会話が成り立たない
- 呼びかけに応じない
- 頭痛
- 吐き気、嘔吐
- めまい、ふらつき
- 不眠
- 健忘症状
- 頭を打った前後のことを思い出すことができない
- 記憶力の低下
- 新しいことを覚えるのが難しい
- 気分の変動
抑うつ 状態- いらいら
- 不安
脳しんとうの検査・診断
- 画像検査:脳しんとう以外に、出血や骨折など重大な損傷があるかどうかを調べる
頭部CT検査 - 症状が強い場合、とても強い力がかかったと想定される場合などで撮影される
脳しんとうの治療法
- 脳しんとうを起こしたら、しっかりと休養をとることが重要
- 症状が悪化しない範囲で日常生活を送る分には問題ない
- 心拍数が上がるような活動は控えた方が良い
- テレビを見る、ゲームをする、本を読む、勉強するなど、頭を使う活動は脳しんとうの症状を悪化させる可能性がある。そういった活動で症状が悪化する場合は、控えた方が良い
- 症状が強い場合は、学校や仕事を休む
- 安静にする期間は特に決まっていないが、意識消失した場合には1-2週間の休養、競技中止が望ましい(セカンドインパクト症候群の予防)
- 意識消失はなく、多少ぼーっとする症状が数分間続いて元に戻る程度であればすぐに競技を再開して良いとするデータもある(ただし、競技を中止して医療機関を受診するのが無難)
- 脳しんとうの治り方
- 通常、脳しんとうによる意識消失、
意識障害 は数分から数時間で良くなる - 頭痛や吐き気、ふらつきなどの症状は、脳しんとうから10日以内に治ることが多い。集中できない、記憶力が落ちているといった症状は、治るまでにさらに数日から1週間ほど必要になることが多い
- 通常、脳しんとうによる意識消失、
- 完全に回復する前に再び脳しんとうを起こすと、「セカンドインパクト症候群」を起こすことがある
- セカンドインパクト症候群とは、軽い衝撃でも一気に脳が腫れて、重篤な意識障害(
昏睡 状態)、神経症状が出現する状態 - セカンドインパクト症候群は、重症になってしまい、後遺症が残る可能性が高い
- 脳しんとう後は安静にし、医師の指示に従い激しい活動を避けることが重要
- セカンドインパクト症候群とは、軽い衝撃でも一気に脳が腫れて、重篤な意識障害(
- 脳しんとうを予防する方法
- 自転車やバイク、コンタクトスポーツでは自分に合ったヘッドギア、ヘルメットを装着すること
- スポーツにおいてはプレイヤーが正しい姿勢や動きを身に付け、フェアなプレイをすること
脳しんとうの経過と病院探しのポイント
脳しんとうが心配な方
脳しんとうは、交通事故やスポーツで多い外傷の一つです。ボクシングで頭に打撃を受けて、気を失ったり、意識がぼーっとしたりしてしまう、というのが一般的に認識されている経過かと思います。
実際は脳しんとうにも様々な程度があり、意識がはっきりしていて症状は吐き気やふらつきだけといったものもあります。脳しんとうであるかの詳細な診断は専門家でないと困難ですが、脳しんとうを疑わせる症状がある場合には(スポーツ中であれば)プレーから離れさせ、病院を受診するようにしてください。軽い脳しんとうであってもそのままプレーに復帰すると、軽い衝撃で病状が急激に悪化するセカンドインパクトシンドロームと呼ばれる状態の原因となり、命に関わる危険性があります。頭を打つ前後の記憶がない、今いる場所や日付がわからない、嘔吐したなどの症状があればプレーに戻らない、本人が希望しても周囲が止めて戻さないことが肝心です。
脳しんとうでお困りの方
脳しんとうは薬で治る疾患ではありません。自然の経過で症状が改善していくのを待つことが治療になります。そのためにできることは体だけでなく頭も安静にすることです。脳しんとうを起こした後に、勉強や読書など集中力を必要とされる活動を行うと、脳しんとうの症状が悪化したり回復まで時間を要したりすることが知られています。
学校、仕事への復帰は直ちにではなく、医師と相談しながら徐々に行うことをお勧めします。学校や仕事の内容との兼ね合いも大切で、医学的には一概に「何日間休んで下さい」という基準があるわけではありません。スポーツでの意識消失の場合には1-2週間の競技中止を指示するケースが多いです。救急科や整形外科でもある程度の対応は可能ですが、脳しんとうについて専門的な知識や経験をもっている医師は脳外科に多いです。