てんいせいはいがん
転移性肺がん
肺以外の臓器から発生したがんが肺に転移した状態
10人の医師がチェック 183回の改訂 最終更新: 2022.05.30

転移性肺がんの基礎知識

POINT 転移性肺がんとは

肺以外の臓器にできたがんが肺に転移を起こした病気です。大腸がん・乳がん・腎がんなどが肺に転移しやすいことが分かっています。転移した初期は症状を自覚することはありませんが、転移した肺の腫瘍が大きくなると咳・痰・血痰・息切れ・胸痛といった症状が現れます。 がんに対する治療経過・画像検査から総合的に診断します。診断を確定させる必要がある場合は、肺内の腫瘍の細胞を採取して検査します。しかし、多くの場合は転移元のがんの治療がうまくいくと肺の転移巣も縮小しますので、実際に腫瘍を採取しないで治療しながら経過を見ることがほとんどです。転移が起こった場合にはそれまで行っていた治療法を変えて他の治療を行うことがあります。抗がん剤治療が治療の中心ですが、手術や放射線治療で転移性肺がんを治療することもあります。転移性肺がんが疑われた人は、主治医に相談して下さい。

転移性肺がんについて

  • 肺以外の臓器あるいは反対側の肺から肺に転移したがん
    • 肺には全身の血液が酸素を取り込むために流れ込んでくるため、他の臓器にできたがん細胞が血流に乗って流れてくると肺でひっかかりやすく、いろいろながんが肺に転移しやすいと考えられている
  • 最初に肺に出現するいわゆる肺がん(正確には原発性肺がん)とは異なる性質を持つ場合が多い
  • 肺に転移しやすいがん

転移性肺がんの症状

  • 最初は肺がんによる症状を感じないことが多い
  • がんが進行して大きくなった場合の症状
    • 血の混じった痰
    • 咳嗽(せき)
    • 喘鳴
    • 息切れ
  • 転移したがんが周りの器官に影響して起こす症状
    • 胸痛:がんが肋骨や肋間神経に刺激を与えることで起こる
    • 声がかれる:がんが声帯の運動を支配する神経を冒した場合(反回神経麻痺)に起こる
    • 首や顔が腫れる:がんが心臓に血液を戻す大静脈を圧迫し、血液の戻りが悪くなる

転移性肺がんの検査・診断

  • 画像検査
    • 胸部レントゲンX線写真)検査:大きな腫瘤でないと見えない場合がある
    • 胸部CT検査病変が多発性かどうかや形状、患者さんの病気の既往などから転移性肺がんか原発性肺がんか、肺からできたそのほかの病変かをある程度は推測できることもある
      • とくに単発性の場合など判断が難しい場合もあり、その場合には生検を行って組織を調べる必要がある
    • FDG-PET検査がんの全身への広がりを調べる
  • 血液検査:全身の状態や腫瘍マーカーを調べる
  • 喀痰細胞診:痰の中の細胞を顕微鏡で検査する
  • 確定診断に必要な検査
    • 痰の細胞診:痰の中にある細胞を顕微鏡で検査する  
    • 気管支鏡検査:気管支鏡を口または鼻かに入れ、病変の一部を実際に採取し顕微鏡で検査する
    • 針生検(組織診):胸の外から針を腫瘍に刺し、組織の細胞を収集し、顕微鏡検査を行う  
    • 胸腔穿刺:針を使って胸水をとり、その中の細胞を顕微鏡で検査する  
    • 胸腔鏡手術、開胸手術:手術によってがん細胞を採取し顕微鏡検査を行う  
    • 縦隔鏡検査:リンパ節のがんを確認するときに行われる

転移性肺がんの治療法

  • 肺から最初に現れたがん原発性肺がん)か転移性肺がんかの区別をまず行う
  • 通常肺にがんが転移している状態は手術はできない場合が多く、化学療法抗癌剤による治療)が行われる場合が多い
    • 転移した元のがんに効果的な化学療法が選択される
    • 化学療法に加えて分子標的薬という新しい薬が多く開発されている
  • 転移したの種類によっては、転移している数が少なければ手術で肺の一部を切り取ったり、放射線治療で転移性肺がんを治療する場合がある
  • 呼吸困難などがあれば症状を和らげる治療も検討する

転移性肺がんの経過と病院探しのポイント

転移性肺がんが心配な方

転移性肺がんの診療はがんがもともと発生した場所(原発巣)によって担当する診療科が異なります。例えば、大腸がんの肺転移であれば消化器内科か消化器外科が担当しますし、乳がんの肺転移であれば、乳腺外科が担当します。ただし、転移性肺がんかどうかの判断が難しい場合には、呼吸器内科も交えて診療を行いますし、転移性肺がんを切除する場合には、呼吸器外科が手術を担当します。

転移性肺がんに関連する診療科の病院・クリニックを探す