クレスト症候群の基礎知識
POINT クレスト症候群とは
全身性強皮症のうち、石灰沈着症、レイノー現象、食道の機能障害、皮膚硬化、毛細血管拡張症を認めるものを指します。免疫の異常により起こります。症状としては皮膚の下に石灰が沈着したり、指先が冷えると青白くなる、ものを食べた時の胸でつっかえる感じ、食後の胸焼け、指先を中心として皮膚が硬くなる、などがあります。検査としては血液検査やCT検査、場合により食道造影検査などが行われます。末梢の血流改善のため、カルシウム拮抗薬、ビタミンE、食道の機能障害に対しては胃薬や制吐薬などが使われます。気になる方はリウマチ内科、膠原病内科を受診してください。
クレスト症候群について
クレスト症候群の症状
- 病名の「CREST」は代表的な症状の頭文字を集めたもの
- 石灰沈着症 (Calcium deposits)
- 皮膚の下に石灰が沈着する
- レイノー現象 (Raynaud phenomenon)
- 指先の皮膚が青白くなり、しびれる
- 食道の機能障害 (Esophageal dysfunction)
- 皮膚硬化 (Sclerodactyly)
- 皮膚の一部が硬くなる
- 症状は、手足の先端部、顔、喉などに出る
- 皮膚がつっぱり、関節が動かしにくくなる
毛細血管 拡張症 (Telangiectasia)- 皮膚に、小さな赤い斑点が出る
クレスト症候群の検査・診断
- 皮膚状態の観察で、診断がつくことが多い
- 血液検査
自己抗体 の有無を調べる
レントゲン (X線 写真)検査:皮膚の下の石灰化の有無を調べる腹部CT検査 :内臓に異常がないか調べる- 食道
造影 検査
クレスト症候群の治療法
- 末梢の血流が悪くなることが病気に関わっているとされるため、末梢の血流改善のため、カルシウム拮抗薬、
ビタミン E、抗血栓 薬を用いる - 末梢循環障害がひどい場合にはプロスタグランジン製剤を用いる
- 皮膚硬化の進行が早い場合や内蔵障害を伴う場合には
免疫 抑制薬を用いることがある - 臓器ごとの症状に対する治療を行う
- 胃食道逆流症がある場合、プロトンポンプ阻害薬で胃酸の分泌を抑える
- 吐き気などがあれば制吐薬や抗ドパミン薬を使うこともある
- 胃食道逆流症がある場合、プロトンポンプ阻害薬で胃酸の分泌を抑える
クレスト症候群の経過と病院探しのポイント
クレスト症候群が心配な方
クレスト症候群では、手の色の変化(一時的に真っ白になるレイノー現象)や、皮膚の変化(色や質感の変化)が典型的な症状です。手足の筋力が弱くなったり、全身のだるさ、また、まぶたや手などに皮膚の変化(色や質感の変化)が出現します。
ご自身がクレスト症候群でないかと心配になった時、まずお近くの内科のクリニックで受診することをお勧めします。似たような症状を示す疾患にも様々な種類のものがあるため、膠原病なのか、それ以外の病気なのかを判断するためです。その上で膠原病だということになれば、最初にかかった医療機関から診療情報提供書(紹介状)をもらった上で専門病院を受診するのが良いでしょう。診療情報提供書がないと基本的な検査を一からやり直すことになってしまうためご注意なさって下さい。
クレスト症候群の診断は問診と診察、血液検査、そして胸部レントゲンやCTで行います。血液検査は一般内科では測定しない特殊な項目も確認しますので、内科のクリニックを受診してその日のうちに診断がつく、というような病気ではありません。
特殊な医療機関としては、リウマチセンターを開設している病院もあります。これらの医療機関では、クレスト症候群を専門とする医師やその他スタッフが多く、重症度が高かったり、他の病気と似ていて診断の確定に難渋しているような方に適しています。なお、俗に「リウマチ」とだけ言うと医学的には関節リウマチを指すことが多いですが、「リウマチ系疾患」、「リウマチセンター」というような場合については、関節リウマチに限らず、その他の関節や全身の痛みを伴う疾患(膠原病疾患と重なります)をまとめて指します。全身性強皮症もこの中に含まれる疾患の一つです。
クレスト症候群でお困りの方
クレスト症候群は自己免疫疾患といって、免疫細胞(白血球)が不適切に活動してしまうことが原因の病気です。したがって治療は、免疫細胞の働きを抑えるような内服薬になります。また、胃食道逆流症の症状が強い場合には、胃薬を内服するなどの対症療法を行います。
患者さんによって効果的な薬が異なること、同じ薬でもどの程度の量で効果があるかが異なることから、通院しながら少しずつ薬を調整して、その人に合った処方を探します。多くの方にとって、治療のために必ず入院しなければならないというような病気ではありませんが、完治が簡単に望める病気でもなかなかないため(症状が取れたり、薬の内服が必要なくなったりすることはあります)、継続的に通院を続ける必要があります。
頻度の高い病気ではないため、診療は専門医の下で受けることが勧められます。専門の医師はリウマチ専門医になりますが、リウマチ専門医には内科系の医師と整形外科系の医師がいるため区別が必要です(両者を認定しているのは同じ学会です)。その医師が内科に所属しているのか、整形外科に所属しているのかが分かれば判断がつくかと思いますが、クレスト症候群を診療するのは内科系のリウマチ専門医になります。ただし、この病気は膠原病に分類される疾患ではあるのですが、病気が内臓に進展していないような場合には、通院先が皮膚科となることも多いです。
他の科の病気と比べると、適切に診療できる経験をもった医師が少ないのが膠原病でもありますが、長く付き合っていく病気であるため、信頼できる主治医を見つけることが大切です。
クレスト症候群のタグ
クレスト症候群に関わるからだの部位