らんそうがん
卵巣がん
卵巣にできた悪性腫瘍のこと。大きく3種類に分けられるが、上皮性卵巣がんというタイプが多い
10人の医師がチェック 124回の改訂 最終更新: 2024.05.29

卵巣がんのステージ(病期分類)・生存率について

卵巣がんのステージは画像検査や手術の結果によって決まります。ステージが決まることで、最適な治療法を選んだり、その後の経過を見通しやすくなります。ここでは、卵巣がんのステージの詳しい説明とともに、治療法や生存率との関係について説明します。

1. 卵巣がんのステージ

卵巣がんのステージは4つに大別されます。主に、がんの広がりによってステージが決まり、数字が大きくなるほどがんが進行した状態を示します。大まかな内容は次の通りです。

【卵巣がんのステージとその内容】

  • ステージI(I期)
    • もっとも早期の段階。がんは卵巣内に留まっている状態
  • ステージII(II期)
    • がんは卵巣の外に広がっているものの、卵巣周りまでで留まっている状態
  • ステージIII(III期)
    • がんがお腹全体に散らばっている状態、もしくはお腹の中心にある血管(大動脈・大静脈)の周りのリンパ節転移をしている状態
  • ステージIV(IV期)
    • もっとも進行した段階。他の臓器(肝臓や肺など)に転移をしたり、胸水(肺の周りに溜まった水分)からがん細胞が見つかる状態

ステージにはこの後説明する「治療法」と「生存率」と関係があります。

2. 卵巣がんのステージと治療法について

ステージを決める目的の1つが、最適な治療法を選ぶことです。ここでは、それぞれのステージごとの治療法について説明します。 なお、手術や抗がん剤治療放射線治療の詳細は「こちらのページ」で説明しているので、参考にしてください。

ステージI

ステージIは最も早期の段階ですが、その中でも程度に差があり、さらに細かく3段階(IA、IB、IC)に進行度が分かれます。それぞれの段階で治療法が異なります。がんの悪性度が低い(グレード1)IA・IBの人は手術だけで治療ができます。手術後の抗がん剤は基本的には必要ありません。一方、がんの悪性度が高い(グレード2、3)IA・IBの人とステージICの人は手術後に再発予防の抗がん剤治療が行われます。

基本的に、手術では卵巣と子宮を取り除きます。しかし、ステージIで悪性度が低く将来の妊娠を希望する人は、条件がそろえば卵巣と子宮を残すことができます。条件の詳しい内容は「こちらのページ」を参考にしてください。

ステージII、III

ステージII、IIIの人にはまず手術が行われ、卵巣と子宮が摘出されます。転移が見つかった場合は、可能な範囲で取り除かれます。手術後、「再発予防」や「残ったがん細胞の死滅」を目的とした抗がん剤治療が行われます。ステージIの人とは異なり、子宮や卵巣を残すことは原則として検討されないことが多いです。

ステージIV

ステージIVはがんが最も広がった状態ですが、その中でも状態によって治療方針が2つに分かれます。 手術でがんが取り除ける可能性が高い人にはステージII、IIIの人と同様にまず手術が行われ、その後抗がん剤治療が行われます。一方で、手術でがんが取り切れないと想定される人にはがんをできるだけ小さくする目的で抗がん剤治療が行われ、がんが十分に小さくなったところで手術が行われます。

3. 卵巣がんのステージと生存率(予後)について

卵巣がんのステージごとの5年生存率を表に示します。

【卵巣がんのステージごとの5年生存率(実測生存率:2014年-2015年診断例)】

ステージ 5年実測生存率
ステージI 88.7%
ステージII 74.9%
ステージIII 45.1%
ステージIV 27.1%

生存率はあくまで過去の治療実績の結果なので、現在の治療を反映しているものではありません。医療は日々進歩しているので、現在の治療が過去の治療の結果を上回る可能性は十分ありえます。生存率はどうしても気になる数字ですが、とらわれすぎないようにしてください。先行きの不安や疑問はお医者さんや医療者に伝えて、少しでも前向きになれることに目を向けるのが大切です。

【参考文献】

・がん情報サービス「がんの統計’24
・「卵巣がん治療ガイドライン2020年版」(日本婦人科腫瘍学会/編)、金原出版
・「がん診療レジデントマニュアル(第7版)」(国立がん研究センター内科レジデント/編)、医学書院、2016年
・「産婦人科研修の必修知識2016-2018」、日本産科婦人科学会、2016年
NCCN ガイドライン 卵巣がん