急性胃炎・急性胃粘膜病変(AGML)の治療とは
AGMLの治療では原因となるストレスや薬剤を取り除くことが大切です。薬物療法では胃酸分泌を抑えたり胃粘膜を保護する薬剤が使われます。出血が見られる場合には
1. AGMLの治療方針
AGMLの原因が明らかな場合には、その原因を取り除くことがもっとも基本的な治療です。その上で胃酸の量を減らしたり胃粘膜を保護するような薬物治療を行います。症状が強い場合や出血している場合にはいったん食事を止めて胃粘膜への刺激を減らし、病状が落ち着いたら流動食やおかゆから食事を再開します。出血が起きている場合には内視鏡を使った止血術が行われます。
2. 原因を取り除く
AGMLの人の約半数ではストレスや薬剤などの原因が判明します。AGMLの治療ではまずこれらの原因を取り除くことが重要です。
ストレス
精神的ストレスを取り除くことは簡単ではありませんが、一時的な対応として入院治療を行うことでストレスの要因から離れることができます。
薬剤
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などの薬剤が原因であれば薬の内服を中止します。ただし、
感染症
ヘリコバクター・ピロリ菌、サイトメガロウイルスなどの
全身疾患
外傷(大けが)や熱傷(大やけど)がAGMLの原因になっている場合には、これらの病気の治療を進めることがAGMLの改善につながります。
3. 食事療法

AGMLの症状が強かったり、出血を起こしている場合には入院して食事を止めます(絶食)。食べ物による刺激を取り除くとともに、胃酸が過剰に分泌されないようにすることが目的です。食事を止めている間は脱水や栄養不足にならないように点滴治療を行います。
食事を再開する場合は、流動食(スープ状の食事)や柔らかいおかゆのような食事からはじめます。胃への負担を減らすために、塩分や脂肪の多い食事、辛い食事、硬いおかずは避けたほうが良いでしょう。食事をとっても症状が悪化しなければ、1-2日ごとに普段の食事に近づけていきます。
4. 薬物治療
AGMLの薬物治療では胃酸の分泌を抑える薬や胃粘膜を保護する薬を使います。具体的には以下のような薬剤が用いられます。
- 胃酸を抑える薬:プロトンポンプ阻害薬(PPI)
- 胃酸を抑える薬:H2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)
- 胃粘膜保護剤
- アルギン酸(主な商品名:アルロイドG)
- 制酸剤
- 漢方薬
この中ではプロトンポンプ阻害薬が使われることが多いですが、病状に応じて他の薬を用いたりいくつかの薬を組み合わせて内服することもあります。
5. 内視鏡的止血術
- 機械的止血法:クリップと呼ばれる道具を使って出血している血管を挟み込むことで出血を止めます。
- 熱凝固法:止血鉗子と呼ばれる道具を使って、出血している血管に熱を加えて血液を固める(凝固)ことで出血を止めます。
- 局注法:エタノールや高張ナトリウムエピネフリン液と呼ばれる注射液を出血している血管の周りに注入して出血を止めます。
- 薬剤散布法:トロンビンなどの止血効果のある薬剤を出血している場所に散布して出血を止めます。
どの方法を利用するかは、出血の状態や出血している場所などの条件によって決められます。いくつかの方法を組み合わせて治療する場合もあります。
6. 外科手術
薬物治療や内視鏡治療の進歩によって、AGMLに対して外科手術が行われる機会はほとんどなくなりました。
胃潰瘍が胃を貫通するくらい深くなって穴があいた場合(
参考文献
・小俣政男, 千葉勉/監修, 「専門医のための消化器病学第2版」, 医学書院, 2013
・Jensen PJ, Feldman M, Acute hemorrhagic erosive gastropathy and reactive gastropathy. UpToDate (2020.5.2最終更新)
・Feldman M, Jensen PJ, Gastritis: Etiology and diagnosis. UpToDate(2020.5.2最終更新)
・gastropedia:急性胃粘膜病変(2020.7.31閲覧)