肩腱板損傷の基礎知識
POINT 肩腱板損傷とは
肩関節の周囲には肩を支え、運動するために様々な筋肉が存在します。その中でも特に重要な役割を果たしている筋群が「腱板」です。ローテーターカフとも呼ばれます。肩腱板損傷とは、腱板が損傷し、筋肉が部分的にあるいは全て断裂した状態を指します。中年以降、特に男性で、利き腕側によく起こります。症状としては動作時の痛みや痛みによる不眠などが見られます。肩関節周囲炎(いわゆる五十肩)とは違う状態であり、肩腱板損傷の方が肩関節の動きが制限されない点が特徴です。診断は問診と診察、レントゲン(X線)検査などで行います。必要に応じてMRI検査も行われます。治療は安静にすること、痛み止めの飲み薬や注射を行うこと、リハビリすることが中心となります。それでも痛みや動きにくさが良くならない場合には手術することもあります。肩腱板損傷が心配な方や治療したい人は整形外科を受診してください。
肩腱板損傷について
- 肩関節を安定させる筋肉の集まりである「腱板」が損傷、断裂した状態
- 腱板はrotator cuff(ローテーターカフ)とも呼ばれる
- 腱板には以下のような筋肉が含まれる
- 肩甲下筋(けんこうかきん)
- 棘上筋(きょくじょうきん)
- 棘下筋(きょくかきん)
- 小円筋(しょうえんきん)
- 肩腱板断裂ともよぶ
- 完全断裂と不全断裂がある
- 主な原因
- 腱板の老化
- 半分くらいの方は外傷など原因がハッキリしているが、残りは日常動作の中で腱板の損傷が起きる
- スポーツ(野球やソフトボールなど)
- 交通事故 など
- 腱板の老化
- 男性の方が
発症 しやすい- 60歳代での発症が多い
- 男性の方が起きやすいのは、肩の使いすぎが影響と考えられている
- 若い人でも、野球などによる投球肩として発症することがある
- 肩関節周囲炎(いわゆる五十肩)と間違えられることが多いが、肩腱板損傷では、あまり関節の動きが硬くならない
肩腱板損傷の症状
- 肩が動かしづらい
- 運動時の肩の痛み
- 睡眠時の肩の痛み
肩腱板損傷の検査・診断
- 診察
- 腱板を構成している筋肉の筋力テスト
- 肩の痛みがあるかどうかを調べる
- 肩の力が入りにくいといった
症状 があるかどうかを調べる
- 画像検査:骨や腱の状態などを調べる
レントゲン (X線 )検査- 骨の状態や、関節の様子が見られる
MRI 検査- 腱板そのものを観察することができる
- 超音波(
エコー )検査
- これらの検査を行うことで五十肩と区別することができる
肩腱板損傷の治療法
保存療法 三角巾 (または固定用装具)で安静にする- 痛みの治療:痛み止めの飲み薬や
ステロイド薬 の局所注射- 痛みが治まってきたらヒアルロン酸の注射を行うこともある
- リハビリテーション:肩の動きを改善したり、日常生活の動作を練習したりする
- 断裂した腱板が
治癒 することはないので、残っている腱板の筋力トレーニングは重要
- 断裂した腱板が
- 手術
- 保存療法で痛みや運動障害が治らないときに検討する
関節鏡 視下手術と通常(直視下)手術がある- 関節鏡の方がキズも小さく最近普及してきているが、大きな腱板断裂の場合には直視下手術が行われることが多い
- 手術後も継続的なリハビリテーションが重要
- その他
- 無理な肩の姿勢をとらないように心がける
- スポーツの後はアイシングやストレッチを行う
肩腱板損傷の経過と病院探しのポイント
肩腱板損傷が心配な方
肩腱板損傷は腱板の老化や、肩関節に強い力が加わることで発症します。肩を強く打ったり、スポーツで急に力んだりした後から肩が痛く、または動かしづらくなった場合には、肩腱板損傷の可能性があります。
ご自身の症状が肩腱板損傷でないかと心配になった時、まずはお近くの整形外科のクリニックを受診されることをお勧めします。肩腱板損傷の診断は診察とレントゲン(X線)検査で行います。整形外科のクリニックであれば、総合病院でなくても、ほとんどのところにレントゲン検査の設備がありますので、クリニックでの診断が可能です。場合によってはMRI検査が必要となることもありますが、その必要性が高い場合には、それまでの経緯と検査結果をまとめた診療情報提供書(紹介状)をもらって総合病院で検査を受けることになるかもしれません。
肩腱板損傷でお困りの方
肩の腱板断裂では、症状の重さによって治療法が異なります。三角巾をつけて1-2週間の安静を保つことで肩の動きが改善することも多いです。しかし、それよりも重症な場合には手術が必要となります。
整形外科のある病院に入院して手術を受けることになりますが、関節鏡手術(細く小さなカメラが入るような穴を皮膚に開けて行うもの)と、関節鏡ではなく肩にしっかりと切開を入れて行う手術があります。関節鏡の方が傷が小さく術後の回復が早いというメリットがある一方で、狭い中で行わなければならないために手術中の動作に制限があるというデメリットもあります。どちらが良いかは損傷の程度によって変わってきますので、ご自身の考えを伝えた上で主治医からも説明を受け、どちらが良いかを決めていくのが良いでしょう。
手術が不要だった場合には、整形外科のクリニックであれば、特に専門を限らずに定期的な通院での対応が可能な病気です。ある程度の定期的な通院が必要となりますので、何よりも主治医との相性や病院の通いやすさが重要です。医師によって治療方針が大きく変わってくる病気ではありませんので、信頼できて、日常生活の悩みをしっかり相談できる主治医を見つけることがとても大切です。