加齢黄斑変性の基礎知識
POINT 加齢黄斑変性とは
目の奥にあるお椀のような形をした膜のことを網膜といいます。 この網膜の中心部分(黄斑)が年齢とともに変化して、物が歪んで見えたり失明したりする病気です。遺伝や喫煙が病気と関連していると考えられています。黄斑の変化の仕方によって萎縮型と滲出型の2つに分けることができます。加齢黄斑変性症になると、視野の中央が見えにくくなります。具体的には、中央が暗く見えたり、ものが歪んで見えたりします。視力検査や眼底検査、アムスラー検査を行い、視力や視野の状況が確認されます。薬物治療や光線力学的療法(レーザー治療の一種)で治療が行われます。病気と関連がある喫煙は控えるようにしてください。
加齢黄斑変性について
黄斑 という網膜 の中心部分が年齢とともに障害され、物が見えにくくなっていく病気- 遺伝や喫煙などとの関連が指摘されている
- 欧米では
失明 の原因の1位と患者数が多い病気
- 欧米では
- 大きく2つに分けられる
萎縮 型- 老化とともに網膜のまわりの細胞が縮んでしまい網膜に障害が起こるタイプ
- 症状の進行は比較的穏やか
- 滲出型
- 網膜の外側に異常な血管ができ、破れた血管から血液がにじみ出て網膜にダメージを与えてしまうタイプ
発症 後、急速に症状が悪化する
加齢黄斑変性の症状
- 主な症状
- 視野の中央が見えにくい
- 中央が暗く見える
- ものが歪んで見える
- 視力が低下する など
加齢黄斑変性の検査・診断
視力検査 :視力の低下の有無を調べる眼底検査 :瞳を開く目薬を使って、眼底鏡 で眼の奥にある網膜 の状態を調べる- 蛍光
眼底 造影 検査を行う場合もある- 静脈から造影剤を入れて、網膜に新しい血管ができていないか調べる
- フルオレセイン造影検査とインドシアニングリーン造影検査という2種類の検査方法がある
- 蛍光
光干渉断層計検査:特殊な機械を使って、網膜の断面を調べ、新しい血管がないか詳しく調べる
アムスラーチャート:見え方に歪みがないかを調べるセルフチェックとして用いられる
加齢黄斑変性の治療法
萎縮 型は今のところ治療法がない- 滲出型は場合によっては以下の治療法が有効
- 薬物治療
- 眼に注射(VEGF阻害薬、抗VEGF/抗アンジオポエチン2
抗体 )をして、新しい不要な血管が増えすぎてしまうことを予防する - 視力改善が得られる場合もあるが、現状では完治させることは難しい
- 眼に注射(VEGF阻害薬、抗VEGF/抗アンジオポエチン2
- 光線力学的療法(レーザー治療のひとつ)
- 薬物治療
- 予防には禁煙が最も有効
加齢黄斑変性の経過と病院探しのポイント
加齢黄斑変性が心配な方
加齢黄班変性は、加齢とともに網膜の中心部が障害されて、視力が低下したり物が歪んで見えたりする疾患です。視力低下だけでなく、視野の中央が黒く抜けて見えたり、また真っ直ぐのはずのものが歪んで見えたりする場合には加齢黄班変性の可能性があります。ただし、このような症状を呈する目の病気は他にもありますので、ご心配になった場合にはご自身で判断せずに、まずは一度お近くの眼科クリニックを受診されることをお勧めします。
加齢黄斑変性でお困りの方
加齢黄班変性は、根本的な治療が未だ難しい疾患の一つです。レーザー治療でそれ以上の進行を予防させることは行われていますが、それでも徐々に病状は進行していきます。
その他には、眼の中で余分な血管が広がりすぎることを防ぐための眼内注射もあります。完全に根治できる治療というわけにはいかないのですが、治療が奏功すれば視力がやや改善することがあります。注射一本が十数万円と高額な治療となるため、高額療養費制度を活用するなど、担当医と十分に相談の上で行う必要があります。
加齢黄班変性の方でも病状によってこの薬を使用できる場合とそうでない場合がありますので、まずは主治医と相談の上で細かな検査を行う必要があります。眼科クリニックでも対応可能なところもありますし、必要があれば大病院を紹介してもらうことができます。もしかかりつけの眼科がすでにあるようであれば、専門病院を受診するとしても、そこから診療情報提供書(紹介状)をもらった上で受診することをお勧めします。加齢黄班変性の治療を選択する上で普段の様子やその他の病気の有無、検査結果はとても参考になりますし、診療情報提供書がないと基本的な検査を一からやり直すことになってしまうためです。
現在の日本の医療体制では、「通院は近所のかかりつけ医、入院は地域の総合病院」といった分業と、医療機関同士の連携が重視されています。重症の患者さんが安心していつでも総合病院にかかれるように、総合病院でなくとも診療が行える病状の方はできるだけ地域のクリニックを受診してもらって住み分けを行うという形です。これには、地元に自分のかかりつけ医(主治医)を作ることで、その人の病状全体が把握できるというメリットもあり、必要あればその都度、病気ごとに専門の医師や医療機関と連携して診療を行います。