にゅうぼうのしこり・できもの
乳房にしこりやできものがある

乳房にしこりやできものがあるの基礎知識

概要

乳房のしこりやできものの原因には経過観察できるもの(主に良性腫瘍)と、治療が必要なもの(主に乳がん)があります。しこりができても必ずしも治療しなければならないわけではありません。

良性の病気と乳がんではしこりの特徴が異なります。良性のしこりは周りとの境界がはっきりとしており、押すと簡単に動くという特徴があります。他方、乳がんのしこりは周りとの境界がはっきりせず、押しても胸にくっついたかのようで動きにくいことが多いです。

しこりの特徴から自分でも良悪性の区別がつきそうなものですが、自己判断はしないでください。乳房のしこりは乳腺外科や乳腺外来、またはレディースクリニックなどで相談できます。

原因とメカニズム

乳房のしこりは、母乳を作る乳腺という場所の異常によることが多いです。たとえば、乳腺細胞が化したものが乳がんであり、正常な乳腺細胞が異常に増えたものが乳腺線維腺腫です。また、乳腺に感染が起こった状態を乳腺炎と呼び、乳房にしこりを自覚することがあります。

考えられる病気

乳房のしこりやできものの主な原因は次の病気です。

乳がん

母乳を作る乳腺という組織から発生する悪性腫瘍です。マンモグラフィという検査や、しこりの自覚から発見されます。乳がんのしこりは脇に近い部分にできやすいことが知られており、その他には次のような特徴があります。

  • 硬い
  • 表面が凸凹している
  • しこりを押しても動かない
  • しこりの輪郭がわかりにくい

こうした特徴から見分けががつきやすそうに思えるかもしれませんが、その判断は熟練した医師でないと難しいものです。ですので、しこりを発見したら自己判断をせずにお医者さんにみてもらうことをお勧めします。

葉状腫瘍

乳房に発生するまれな腫瘍です。この後に説明する乳腺線維腺腫と形などの特徴が似ています。葉状腫瘍の特徴として、急速にしこりが大きくなることがあげられます。良性腫瘍であることも多いのですが、悪性腫瘍に近い性質を持つこともあるので、治療が必要となることがあります。

乳腺線維腺腫

正常な乳腺が異常に増える良性腫瘍です。腫瘍ではありますが、悪性腫瘍とは異なり、命に危険を及ぼすことはありません。痛みはないことが多く、女性ホルモンの量に反応してしこりの大きさが変わることが知られており、妊娠やホルモン治療によってしこりが大きくなることがあります。乳腺線維腺腫のしこりの特徴は押した時に動きがあり、周りとの境界がはっきりしていることです。

乳腺症

特に異常がなくても乳腺が大きくなってしこりや痛みを自覚することがあります。これを乳腺症と呼びます。乳腺症の主な原因ははっきりとは分かってはいませんが、生理周期に合わせて大きくなったり小さくなったりすることが知られています。具体的には生理前にはしこりが大きくなったり痛みが強くなり、生理の終わりとともにしこりが小さくなり痛みも和らぎます。しこりができる点で乳がんと似ていますが、乳腺症は病気ではなく、身体の自然な反応とも考えられているので、治療の必要はありません。

乳腺炎

乳腺に細菌が感染して起こる乳腺の炎症のことです。乳腺炎の多くは授乳が原因です。授乳時についた乳頭の傷から細菌が入り込んで乳腺炎を起こします。乳腺炎は自然と良くなることがほとんどです。しかし、症状が重くなるとの溜まりを切開して排出する必要があるため、授乳中にしこりや痛みを感じた人は、かかりつけの産婦人科で相談しておくと良いです。

怖い病気

乳がん葉状腫瘍が怖い病気です。当てはまる症状がある人はすみやかに診察を受けてください。乳がんは悪性腫瘍ですので命に危険を及ぼすことがあります。また、葉状腫瘍は基本的には良性腫瘍なのですが、中には悪性腫瘍のように転移することがあるので、受診が必要です。

受診の目安

乳房のしこりを見極めるには熟練した目が必要なので、まず受診することをお勧めします。なるべく受診を急いだ方がいいのは、しこりや乳房に次のような特徴がある人です。

  • しこりが硬い
  • しこりが急速に大きくなった
  • 乳頭から分泌物がある
  • 乳房に凹みがある
  • 乳房にただれがある
  • 脇にもしこりがある
  • しこりが腫れて痛い
  • 乳房の皮膚のひきつれがある
  • 乳房の皮膚に変色がある

しこり以外にも気になることがあれば、ささいなことでもお医者さんに伝えてみてください。

診療科

乳房のしこりの相談先はいくつか考えられます。

乳腺外来・乳腺外科

乳房の病気を専門としています。かかりつけなどがなく、医療機関探しから始める人は、「乳腺外来」や「乳腺外科」に注目してください。

レディースクリニック・女性外来

女性に特有の病気を専門とする診療科です。更年期障害などを専門としていることも多いのですが、中には乳腺の病気も扱っていることがあります。既にかかっている人や、乳腺外来や乳腺外科が近くにない人の相談先として適しています。

産婦人科

授乳期間にしこりを自覚した人は出産先の産婦人科で相談してみるのもよいです。しこりの原因が乳腺炎ですと治療をしてくれることもありますし、他の病気が考えられる人には適切な医療機関を紹介してもらえます。

検査

しこりや乳房全体の状態を確認する必要があるので、画像検査が行われます。画像検査にはいくつか方法があります。

マンモグラフィ

X線を使って、乳房を撮影する検査です。乳房を圧迫して薄くひきのばすことで、しこりを見つけやすくします。乳がんの発見、診断の役に立ちます。

超音波検査

超音波という人が聞き取れない高い振動数の音波を利用した検査です。しこりの中身を調べるのに役立ちます。

MRI検査

磁気を利用した検査です。マンモグラフィや超音波(エコー)検査ではっきりとしない人にMRI検査が検討されます。

治療

原因に合わせて治療が行われます。例えば、乳がんでは手術や抗がん剤治療放射線治療が選択肢になりますし、乳腺炎では抗菌薬による治療が必要になることがあります。
また、しこりの原因によっては治療ではなく、経過観察を勧められる人もいます。その際には、「どのような病気で経過観察するのか」「次の受診は必要なのか」「どのような症状が出たときには受診が必要なのか」などをお医者さんに確認しておくと良いです。

初診推奨診療科の候補