糖尿病に情報・通信を応用
糖尿病の成人患者と医療者が遠隔で治療調整や指導を行うことの効果として、これまでの研究で試された内容を集めた結果が、医学誌『CMAJ』に報告されました。
調査対象として、治療法をランダムに割り当てる方法により、遠隔のケアを行った場合と通常のケアのみの場合を比較した研究が選ばれました。効果の評価には、糖尿病の検査値であるHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)が使われました。治療期間によって、3か月以下、4か月から12か月、12か月を超えた期間の3種類に分類して効果が評価されました。
12か月を超える治療でも効果あり
採用条件を満たす111件の研究が見つかりました。
以下のような方法で医療者と患者がコミュニケーションを取る方法が試されていました。
- ウェブページ
- カスタマイズされたスマートデバイス
- 電話
- スマホアプリ
- SMS
- メール
- ビデオ通話
- 携帯情報端末
- 自動音声アラームシステム
- PCソフトウェア
- FAX
- 呼び出しボタン
- ビデオメッセージ
- 手紙
遠隔で行われたことは、治療薬の調整、一般的な糖尿病の知識の指導、栄養指導、運動指導などでした。
効果の解析により次の結果が得られました。
テレメディシンはフォローアップの3期間すべてにおいてHbA1cの有意な、ただし軽度の減少を達成した(3か月以下での平均差-0.57%、95%信頼区間-0.74%から-0.40%、39件の試験;4か月から12か月の平均差-0.28%、95%信頼区間-0.37%から-0.20%、87件の試験、12か月を超えての平均差-0.26%、95%信頼区間-0.46%から-0.06%、5件の試験)。
遠隔のケアにより、3か月以下の治療、4か月から12か月の治療、12か月を超える治療のすべてについて、HbA1cが低下する効果があると見られました。3か月以下の治療では平均でHbA1cが0.57%低くなっていました(正常値は6.5%未満)。
遠隔診療は糖尿病治療に有効?
遠隔で患者と医療者がコミュニケーションをとる方法を糖尿病治療に応用した、111件の研究の調査結果を紹介しました。すでに世界各国で多くの研究者が通信技術などを利用した医療に注目し、実際の治療で有効だったとする報告も集まっています。
情報技術の発達にともなって遠隔診療の可能性は近年さらに広がっています。現在の日本でも遠隔診療を導入する医療機関が増えつつあります。医療機関の立地や自分の生活スタイルに合わせて、より柔軟に治療を続けられる時代が近付いているのかもしれません。
執筆者
Effect of telemedicine on glycated hemoglobin in diabetes: a systematic review and meta-analysis of randomized trials.
CMAJ. 2017 Mar 6.
[PMID: 27799615]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。