左目のまぶたが上がらなくなった68歳男性
アメリカのハーバード大学とブリガム・アンド・ウィメンズ病院の医師が、重症筋無力症と診断された68歳男性の写真を、医学誌『New England Journal of Medicine』に報告しました。
この男性は、左目のまぶたが下がる症状を訴えていました。ほかの症状はありませんでした。
まぶたが下がる原因は?
まぶたが下がる症状は、主に以下の病気で現れます。
- 脳動脈瘤
- 脳卒中
- 重症筋無力症
- 肺がんなどによる神経への影響(ホルネル症候群、ランバート・イートン症候群)
この男性では、ほかの症状がないことなどから脳動脈瘤や脳卒中らしくないと考えられます。しかし、肺がんなどの影響も否定できません。
診察では重症筋無力症を疑って「アイスパックテスト」が行われました。
アイスパックテストは、症状が出ているまぶたをアイスパックで冷やし、症状が軽くなるかを見る診察方法です。重症筋無力症では冷やすと症状が軽くなる場合が多いとされます。重症筋無力症の症状にはアセチルコリンエステラーゼという酵素が関係しているのですが、冷やすことで酵素の働きが弱くなるため、症状が軽くなると考えられています。
テストの結果、男性の左まぶたを2分間冷やすと上がるようになりました。
血液検査の結果などとあわせて最終的に重症筋無力症と診断されました。薬の治療が行われ、症状はなくなりました。
アイスパックテストは診断基準にも使われている
アイスパックテストが重症筋無力症の診断の役に立った例の報告でした。
アイスパックテストはあくまで参考にする点のひとつです。アイスパックテストだけで診断はできません。しかしアイスパックテストがかなりの信頼度で重症筋無力症を見分けられるとした報告は多く、日本神経学会によるガイドラインで提示された診断基準にもアイスパックテストが盛り込まれています。
「参照文献」のリンク先では、ここで報告されている男性がアイスパックテストをしたときの写真が見られます。特徴が強く出ている写真で、検査の狙いを理解する役に立ちます。
執筆者
Diagnosing Myasthenia Gravis with an Ice Pack.
N Engl J Med. 2016 November 10.
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。