線維筋痛症のあらゆる治療法を調べた結果、欧州学会が唯一「強く支持」したものは?

線維筋痛症は全身の筋肉の痛みを起こす原因不明の病気です。確実な治療法は知られていません。これまでに無数の治療法が試されてきました。ヨーロッパの学術団体が治療の研究報告を集めて評価し、実際の治療に勧められるものをまとめました。
ヨーロッパリウマチ連盟による最新の推奨
ヨーロッパリウマチ連盟(EULAR)が専門誌『Annals of the Rheumatic Diseases』で報告した、線維筋痛症の治療に対する推奨を紹介します。2008年にも推奨が出されていましたが、以後の研究の内容を含めて新しい推奨に更新されました。
12か国から集まった研究班は、線維筋痛症の治療に関するこれまでの研究報告を集めて評価しました。研究報告の集め方、評価の仕方は一定のルールに従い、見つかったすべての治療法を同じ基準で評価しました。
「強く支持」は運動のみ
2,979件の研究報告が見つかりました。
見つかった研究報告から、以下の治療法について検討がなされ、推奨度が決められました。
- アミトリプチリン(抗うつ薬、商品名トリプタノールなど)
- 低用量使用を支持する
- プレガバリン(商品名リリカ)
- 支持する
- ガバペンチン(商品名ガバペンなど)
- 研究のみ支持する
- シクロベンザプリン(日本では未承認)
- 支持する
- 成長ホルモン
- 強く反対する
- MAO阻害薬(抗うつ薬)
- 反対する
- NSAIDs(一般的な痛み止め)
- 反対する
- デュロキセチン(抗うつ薬、商品名サインバルタなど)、ミルナシプラン(抗うつ薬、商品名トレドミンなど)
- 支持する
- SSRI(抗うつ薬)
- 反対する
- ガンマ-ヒドロキシ酪酸ナトリウム(麻薬)
- 強く反対する
- トラマドール(痛み止め、商品名トラマールなど)
- 支持する
- 強オピオイド(痛み止め)
- 強く反対する
- ステロイド薬
- 強く反対する
- 鍼治療
- 支持する
- バイオフィードバック法
- 反対する
- カプサイシン(トウガラシの辛味成分)
- 反対する
- カイロプラクティック
- 強く反対する
- 認知行動療法
- 支持する
- 運動療法
- 強く支持する
- 催眠療法
- 反対する
- マッサージ
- 反対する
- 気功、ヨガ、太極拳など
- 支持する
- マインドフルネス治療(瞑想を取り込んだ治療)、心身リラクゼーション療法
- 支持する
- 複数の治療法を組み合わせた療法
- 支持する
- S-アデノシルメチオニン(サプリメントとしても流通している物質)
- 反対する
- イメージ療法、ホメオパシーなど
- 強く反対する
解釈
線維筋痛症は治療が難しく、いくつかの治療法を試しても痛みが続く人もいます。
ここで紹介した推奨によれば、運動以外に強く勧められる治療法はありません。「反対する」「強く反対する」とされた治療法は、大まかには「効かないとわかっている」または「有害な面があることがわかっている」と言えます。
学術的な背景をもとに試された治療法でも、「強く反対」という結論になったものもあります。カイロプラクティックやホメオパシーは「強く反対」となっていますが、医学的に実際に試されたうえでの結論です。
ここに挙がった治療法は、人によっては効果が出るかもしれませんが、誰にでも劇的な効果が出るとは考えられません。また、挙げられていない治療法については「効きそうだ」と言えるだけの根拠がないと考えていいでしょう。
なかなか治らない痛みに困っている人には苦しい現状が続いています。世の中には困っている人につけ込んで効果不明な「治療」を勧める人もいますが、うたい文句に流されず冷静に判断するためには、すでに試されてわかっていることを知っておくことが役に立つでしょう。
執筆者
EULAR revised recommendations for the management of fibromyalgia.
Ann Rheum Dis. 2016 Jul 4. [Epub ahead of print]
[PMID: 27377815]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。