◆肺炎の抗生物質をやめる基準
成人でもともと健康な人の肺炎(市中肺炎)に対する抗菌薬(抗生物質、抗生剤)の治療期間について、権威ある見解のひとつとして、アメリカ感染症学会・アメリカ胸部学会によるガイドラインでは以下の基準が唱えられています。
- 最低5日間続ける
- 48時間から72時間にわたって体温37.8℃(華氏100度)以下に抑えられるまでは続ける
- 以下の基準に収まらない点が1種類以内になるまで続ける
- 体温が37.8℃以下
- 心拍数が1分に100回以下
- 呼吸数が1分に24回以下
- 収縮期血圧(上の血圧)が90mmHg以上
- 酸素吸入なしで動脈血酸素飽和度が90%以上またはpO2が60mmHg以上
- 口から食べられる
- 意識障害がない
◆312人でガイドラインの基準を検証
ここで紹介する研究は、市中肺炎で入院した人を抗菌薬で治療し、ガイドラインの基準に沿って抗菌薬をやめることで適切な結果が得られるかを検証しています。
312人の患者が対象となり、ランダムに2グループに分けられました。
一方のグループでは、ガイドラインの基準で抗菌薬をやめることとされました。もう一方(対照群)では、医師が個別に判断して抗菌薬をやめることとされました。
◆ガイドラインどおりで問題なし
次の結果が得られました。
ITT分析で、10日時点の臨床的治療成功は対照群で48.6%(150人中71人)、介入群で56.3%(162人中90人、P=0.18)であり、30日時点では対照群で88.6%(150人中132人)、介入群で91.9%(162人中147人、P=0.33)だった。
治療開始から10日時点と30日時点で、個別の判断でも、ガイドラインの基準でも結果に差がありませんでした。
研究班は「アメリカ感染症学会・アメリカ胸部学会の推奨は[...]安全に実践できる」と結論しています。
薬のやめどきに信頼できる基準があれば、漫然と処方を続けられるような事態を減らせるかもしれません。
ただし、ここで紹介した研究は、入院中の処方を決める目的でなされています。処方された薬を患者が自分の判断でやめてしまうのは危険ですので、医師の説明をよく聞いて使用期間を守ってください。
執筆者
Duration of Antibiotic Treatment in Community-Acquired Pneumonia: A Multicenter Randomized Clinical Trial.
JAMA Intern Med. 2016 Jul 25. [Epub ahead of print]
[PMID: 27455166]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。