◆使用期間の違う2群にランダム化
研究班は、次の試験を行いました。
腹腔内の複雑感染があり、適切な感染源のコントロールがなされた518人をランダム割り付けし、10日間を上限として発熱、白血球増加、イレウスが解消したのち2日後まで抗菌薬を使用する群(対照群)および、3から5暦日にわたって抗菌薬の固定された治療コースを受ける群(実験群)とした。
腸など腹部の臓器の異常によって起こった感染症の患者で、感染源が治療によって正常な状態に戻されたあとの人518人が対象者になりました。
対象者は、感染源の治療のあと、あらかじめ決めた内容で3日間から5日間の抗菌薬治療を受けるグループ(実験群)と、状態に応じて最大10日間の抗菌薬治療を受けるグループ(対照群)にランダムに振り分けられました。
2つのグループの間で、最初の治療から30日以内の経過を比較しました。
◆抗菌薬使用期間は4日対8日、ほかの結果に差なし
試験から次の結果が得られました。
手術創感染、腹腔内感染の再発、または死亡は、対照群の患者260人のうち58人(22.3%)に対して、実験群では患者257人のうち56人(21.8%)に起こった(絶対差-0.5ポイント、95%信頼区間-7.0から8.0、P=0.92)。抗菌薬治療の期間は実験群で中央値4.0日(四分位間範囲4.0から5.0)、対照群で8.0日(四分位間範囲5.0から10.0)だった(絶対差-4.0日、95%信頼区間-4.7から-3.、P<0.001)。一次アウトカムの要素およびほかの二次アウトカムのそれぞれの発生率に群間の有意差はなかった。
実際に抗菌薬を使った期間は、実験群でおよそ4日、対照群でおよそ8日でした。30日以内に手術創感染、腹部臓器の感染症の再発、死亡が起こった数を比較したところ、それぞれの発生率を見ても、まとめての発生率を見ても、2つのグループで違いはありませんでした。
抗菌薬を使う期間を短めにしても結果が変わらないなら、治療による負担を軽くできるかもしれません。また、抗菌薬を必要以上に長期間続けることで耐性菌が生まれやすくなると言われていますが、この観点からも評価できるかもしれません。抗菌薬の使い方について、まだまだ様々な研究が出てくるのかもしれません。
執筆者
Trial of short-course antimicrobial therapy for intraabdominal infection.
N Engl J Med. 2015 May 21
[PMID: 25992746]
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