「ガム」を噛むことで術後のイレウスを防げるかも!?

腹部手術後の合併症として、胃や腸が詰まってしまうイレウス(腸閉塞)という状態が起こることがあります。イレウスの発症には様々な対処法が研究されています。その1つに、「ガムを噛むとイレウスを減らせる」という仮説があります。今回、英国の研究チームが、これまでの研究をまとめ直し、ガムを噛むことで早期に腸内の機能を改善する効果があったと報告しました。
◆腸閉塞(イレウス)とは?
主に小腸や大腸が何らかの理由で閉塞してしまい、食物や消化液が滞留してしまうことで最悪の場合は死に至ることもある危険な状態です。
◆論文データベース情報を調査
研究チームは手術後にガムを噛むことで腸の機能が回復するのかどうか調べるために、論文データーベースから、過去の関連する研究の情報を集めました。
情報を統合して解析するため、手術の方法を大腸手術、帝王切開、その他の手術に分けました。
手術後にガムを噛むことによる効果をみるために、腸の機能回復の目安となる以下の項目を介入群(ガムを噛むグループ)と対照群(ガムを噛まないグループ)で比較しました。
- 腸内ガス排出(おなら)するまでの時間
- 排便が再開するまでの時間
- 入院期間
- 腸のぜん動運動を聴取できるまでの時間:健康な人の場合、内容物を先に送り出す際の音がお腹から
聴診 器で聴取できる
◆ガムを噛むことで腸の機能が改善する
調査の結果、81件の研究が集まり、そこに含まれていた9,072人の参加者の情報から、以下のことがわかりました。
ガムの使用によって腸内ガス排出時間が短縮したことの統計的な証拠があった[全体での短縮は10.4時間:大腸手術において12.5時間、帝王切開において7.9時間、その他の手術において10.6時間]。
ガムの使用によって排便の再開までの時間も短縮したことの統計的な証拠があった[全体での短縮は12.7時間の短縮:大腸手術において18.1時間、帝王切開において9.1時間、その他の手術において12.3時間]。
ガムの使用によって入院期間は若干、短縮したことの統計的な証拠があった[全体での短縮は0.7日:大腸手術において1.0日、帝王切開において0.2日、その他の手術において0.8日]。
ガムの使用によってぜん動運動を聴取できるまでの時間は若干、短縮したことの統計的な証拠があった[全体での短縮は5.0時間:大腸手術において3.21時間、帝王切開において4.4時間、その他の手術において6.3時間]。
つまり、ガムを噛むことによって、ガムを噛まない場合に比べて腸内ガスの排出および排便の再開までの時間が短縮し、腸のぜん動運動を聴取できるまでの時間は若干短縮しており、腸内の機能を改善する効果がある可能性を示しました。
ガムを噛むことで、口や喉だけでなく、
現場の医師の方は、ガムの効果についてどのようにお考えでしょうか?
執筆者
Chewing gum for postoperative recovery of gastrointestinal function.
Cochrane Database Syst Rev. 2015 Feb 20;
[PMID: 25697966]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。