2015.08.15 | ニュース

妊娠中に尿から細菌が見つかっても早産が増えることはなかった

オランダ4千人の追跡と、うち248人のランダム化研究

from The Lancet. Infectious diseases

妊娠中に尿から細菌が見つかっても早産が増えることはなかったの写真

妊娠中に細菌などの感染があると、子どもに影響が出るおそれがあります。しかし感染の程度や病原体の種類によっても違うと考えられます。オランダで症状がなく尿検査で細菌が見つかっただけの女性を調べたところ、早産の割合に違いは見られませんでした。

◆妊娠中に細菌尿の検査

研究班は、この研究に参加したオランダの施設で、妊娠中の女性に対して細菌尿が見つかるかの検査を行いました。

その結果、細菌尿が見つかった女性はランダムにグループに分け、偽薬を使うか、抗菌薬を使うか、何も薬を使わないかのどれかを行いました。

それぞれのグループで、対象者を追跡し、早産の割合に違いがあるかを調べました。

 

◆細菌尿があっても、抗菌薬を使わなくても差がない

次の結果が得られました。

偽薬で治療された無症候性細菌尿陽性の女性と、無症候性細菌尿陰性の女性の間で、腎盂腎炎、早産、または両方があった割合には差がなく(208人中6人、2.9% vs 4,035人中77人、1.9%、調整オッズ比1.5、95%信頼区間0.6-3.5)、ニトロフラントインで治療された無症候性細菌尿陽性の女性と、治療されなかったか偽薬治療を受けた女性の間でも差がなかった(40人中1人、2.5% vs 208人中6人、2.9%、リスク差-0.4、95%信頼区間-3.6から9.4)。

細菌尿があり偽薬を使った女性と、細菌尿がなかった女性とで、早産の割合に違いは見られませんでした。また、細菌尿があった女性のうちで、抗菌薬を使った女性と、使わなかった女性でも、早産の割合に違いは見られませんでした

研究班はこの結果から、「合併症のない単胎妊娠の女性で、無症候性細菌尿は早産と関連しない。[...]これらの結果は、妊娠中の無症候性細菌尿に対するルーチンのスクリーニングと治療の方針に疑問を投げかける」と結論しています。

 

この結果は、細菌尿以外に症状があった場合や、この研究の対象者と違う妊娠時期などには必ずしも当てはまるとは限りません。しかし、仮に細菌尿だけでは早産の心配はないのだとすれば、検査を受ける意味があるかについて考えるきっかけになるかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Maternal and neonatal consequences of treated and untreated asymptomatic bacteriuria in pregnancy: a prospective cohort study with an embedded randomised controlled trial.

Lancet Infect Dis. 2015 Aug 5 [Epub ahead of print]

[PMID: 26255208]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

▲ ページトップに戻る