◆過去の研究を統合
研究班は、文献検索により、血中のコレステロールの量と乳がんの発症率について調べた過去の研究を集め、結果を統合しました。
◆総コレステロール、HDLコレステロールが多いと乳がんが少ない
統計解析から次の結果が得られました。
前臨床のバイアスを排除した4件の研究で、乳がんと総コレステロールの間の負の関連(用量応答としてハザード比0.94、95%信頼区間0.89-0.99、7件の研究、I2=78%[...])、HDLコレステロールとの間の負の関連([...]最も高い群で最も低い群に対してハザード比0.82、95%信頼区間0.69-0.98、5件の研究、I2=0%)が観察された。
総コレステロールが多いとき、またHDLコレステロールが多いときに、乳がんが少ない傾向が見られました。
血液の中のコレステロールはLDLコレステロール、HDLコレステロールなどの種類に分かれます。通常最も多いLDLコレステロールと、次に多いHDLコレステロールが大部分を占め、各種の合計が総コレステロールです。
研究班は、この結果について「このメタアナリシスは、総コレステロールおよび、より特異的にはHDLコレステロールと乳がんのリスクの間に、実験的研究で示されたメカニズムから説明されうる、軽度だが統計的に有意な負の関連のエビデンスを確かめた」と述べています。
乳がんの発症には女性ホルモンの働きが関係していると考えられています。女性ホルモンはコレステロールから合成され、また女性ホルモンに血中のコレステロールの量を変える作用があるため、コレステロールの量と乳がんの発症にも何かの影響があることは想像できますが、どんな関係なのかは明らかではありません。
女性ホルモンの役割が明らかになれば、ここで示された結果が何を意味するのかは、よりはっきりと解釈できるのかもしれません。
執筆者
Cholesterol and breast cancer risk: a systematic review and meta-analysis of prospective studies.
Br J Nutr. 2015 Jul 15 [Epub ahead of print]
[PMID: 26173770]
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。