2026.04.08 | コラム

適切な診断書をスムーズに書いてもらうには?

介護保険、傷病手当、指定難病、身体障害者、生命保険など多様なケースで役立つ心構えを解説します
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「5,000円以上払って診断書を書いてもらったが、必要な内容が書かれていない!」
「介護認定のために主治医意見書の記載をお願いしたが拒否された」
「身体障害者には当てはまらないだろうから診断書は書けないと担当医に言われたが、自分で調べたら該当しそうな気がする」
このように、診断書をめぐる医療機関との行き違いやトラブルはあとをたちません。期待したような診断書を書いてもらえないと、手続きにさまざまな支障が生じたり、診断書発行料が無駄になったり、多くのストレスを受けることになります。診断書の発行は健康保険の適用外で、3,000円-10,000円ほどかかることが多いです。ものによっては20,000円前後することもあります。
このコラムでは、医療機関でできるかぎりスムーズに正当な診断書をもらえるようにするコツを紹介します。

1. 事前に担当医と相談!〜窓口丸投げはNG〜

診断書関連での行き違いで最も多いのが、事前に担当医に相談せず診断書を依頼してしまうケースです。

多くの医療機関、特に大きい病院では「文書受付・文書窓口」といった事務部門で診断書の申請を受け付けています。介護保険主治医意見書のように、市区町村の窓口経由で文書受付・文書窓口に届くこともあります。

その後、事務から担当医に記載依頼があり、担当医の記載後に事務を経由して最終的に依頼者に戻ります。担当医が書く前に、事務のアシスタントがカルテ情報をもとに下書きする医療機関も多くあります。

このように依頼者側の手続きは文書受付・文書窓口で完結するため、担当医と診断書に関する会話をしないで済ませてしまうことが少なくありません。

しかし、診断書に必要な情報を普段の診察で漏れなく確認してカルテに記載できているとは限りません。むしろ、必要な情報を完全に把握していることは珍しいくらいです。例えば、以下のような診断書で必要になる情報を挙げてみます。

 

【診断書の種類と必要な情報の例】

  • 介護保険主治医意見書→日常生活の自立度合い、認知症の程度、利き腕や身長体重
  • 傷病手当金 支給申請書→いつからいつまで仕事を休む必要があったか
  • 指定難病 臨床調査個人票→各難病に対応した特殊検査の結果や普段の暮らしぶり
  • 身体障害者診断書・意見書→各障害に対応した検査結果や生活状況

 

いつも高血圧の薬を出してくれている「かかりつけ医」であっても、認知症の程度や普段の生活状況までしっかり把握していることはまれなので、いきなり「介護保険の主治医意見書を書いてください」と言われても容易でないのです。そのため、直近の診察でいいので主治医に意見書の記載を依頼する旨を伝えるようにしてください。そうすれば、追加で必要な問診や検査を検討してもらえます。

また、傷病手当についても「いつからいつまで病気で働けなかったのか」が手当金に直結しますが、具体的な日付までは担当医も情報なしには分かりません。事前相談なしに支給申請書の記載をお願いすると、個別の事情が考慮されず、一般的な治療期間を機械的に記載されるかもしれません。

指定難病の臨床調査個人票や身体障害者の診断書は、それぞれ都道府県で指定された指定医にしか記載してもらえない点にも注意が必要です。担当医がこうした分野に詳しくないこともあるので、その場合は制度に詳しい他のお医者さんと連携・紹介してもらうのもひとつの正当な手段です。

どの種類の診断書にせよ、窓口に依頼をする前に一言お医者さんに相談をすると、円滑に進みます。

 

2. 担当医との上手な相談方法〜見てない、聞いてないことは書いてもらえない〜

診断書を医療機関に依頼するからには、「何かを証明してほしい」という状況のはずです。だからこそ「証明してほしいこと」を担当医としっかり共有し、確認しておくことが重要です。具体的に確認しておくとよいこととして、以下のようなものが挙げられます。

 

【診断書記載前に担当医と共有・確認しておきたい内容】

  • なぜ診断書を書いてもらいたいのか
  • いつから症状があって、いつからいつまで勤務などが不能であったか
  • 病名(特に複数ある場合)は何か
  • 治療にどれくらいかかるか
  • いつから復職が可能と見込まれるか 
  • 就業内容に制限はあるか など

 

こうした内容を事前に擦り合わせておくことにより、「意図した病名と違う病名についての診断書が作成された」、「復帰後もつらくて肉体労働は難しいのに、単に『〜日から復職可能』と記載されてしまった」などの行き違いを避けることができます。短い診察時間で伝えきるのは難しい面もあるので、症状や期間など自身でわかる情報は、箇条書きのメモにして渡すことも有効です。

ただし、上記のような内容を共有するのは重要ですが、あくまで診断書は担当医・医療機関の公正な判断で記載されるもので、押し付けがましくならないようにすることも重要です。休暇や補償金を不当に貰うことを目当てに診断書を希望する人もいるので、医療機関側も悪事の片棒を担がないように注意しています。そのため、医学的、客観的に不合理と判断されることは頼んでも書いてもらえないことは知っておく必要があります。

たとえば、「2,3週間前からずっと風邪で働けなかった」と初診時に主張しても、初診前のことは客観的に確認しようがないことが多く、原則として証明してもらえません。「突き飛ばされて転倒して骨折したことを証明してほしい」と言われても、担当医は突き飛ばされたかどうかは証明できないので、医学的・客観的に骨折していることや治癒までの目安などしか記載できません。

お医者さんも感情のある人間なので、自分都合のことばかり事細かに要求すると、親身な対応をしてもらえないこともありえます。大事なのは、「診断書を書いてもらう目的と、書いてほしい内容を共有したうえで、詳細な内容は医療機関に任せる」というスタンスだと思います。

医療機関独自の形式で自由記載で書いてもらうような診断書の場合には、事前の相談が特に重要です。一方、がん保険や生命保険のような、保険会社の詳細な書式が決まっている診断書の場合には、客観的事実を記載してもらうだけのことも多く、行き違いが生じる頻度は少なめのように思います。

 

3. さいごに

医療機関でのスムーズな診断書のもらい方について解説しました。

「高いお金を払ったのに認定してもらえなかった」「窓口で突き返された」––。 診断書をめぐるトラブルの多くは、お医者さんの意地悪ではなく「制度における前提知識の違い」と「手続き上のすれ違い」から生まれます。

診断書が必要になるシチュエーションは、病気やケガ、介護などで大変なことも少なくありません。そうした中で、書いてもらいたいことがあるのは承知していますが、お医者さんには頼まれても書けない内容があります。法的・医学的責任を負って診断書という公的な文書を作成していますので、安易な対応はできないという側面は認識しておいてください。

それでも診断書は「患者さんと医療者との共同作業で出来上がるもの」だと意識して、大変な状況で少しでもストレスなく必要な診断書をもらえるよう、このコラムが役立てば幸いです。

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。