飛蚊症は痛みや見えづらさなどの症状を伴わないことも多く、「時間が経てば自然と良くなる」と早合点して、眼科医を受診せずに放っておく人が少なくありません。確かに、飛蚊症は多くは問題にならないのですが、重大な目の病気が隠れていることもあります。失明やそれに近い状態まで視力が下がることがありますので放置は禁物です。
今回の記事では、受診すべき大事な4つのサインについて解説します。この記事を読めば、飛蚊症が出た際にどのようなことに気をつけるべきか分かります。
飛蚊症はどんなもの?
飛蚊症はあらゆる年代に起こりますが、高齢者ほど、特に近視の人ほど多く見られるとされています。
また、飛蚊症は人によってさまざまな見え方がします。虫以外にも、水玉、黒いスス、糸くず、お玉じゃくし、輪などが見えると言うこともあります。飛蚊症で見えるものの色は黒が基本的ですが、白や透明なこともあります。さらに、数も1つ、2つの時もあれば、数え切れないほど多い場合もあります。いずれにせよ、あるはずのない物が目の前を飛んでいれば、それは飛蚊症の可能性があります。
飛蚊症の症状が出る目の病気とは
実は多くの飛蚊症は、目の中にある硝子体という組織が加齢で変質することによって起こることが分かっています。
硝子体は目の中にある物質でもともとゼリー状ですが、年齢とともに少しずつ液状になります。そして、液化が進むと硝子体の容積が減ってしぼむため、硝子体が網膜から剥がれてきます。この際に硝子体ににごりが生じたり、剥がれた部分の影が映り込んだりして、飛蚊症を自覚することがあります。これは後部硝子体剥離という状態で、飛蚊症の原因で最も多いとされています。
後部硝子体剥離による飛蚊症は、特に治療をしなくてもしばらくすると消えて見えなくなることが知られています。しかし、中には視力低下につながる病気を発症したために飛蚊症を自覚することもあるので注意が必要です。
飛蚊症に関連する放置してはいけない病気
飛蚊症を生じうる注意すべき目の病気はいくつかありますが、ここでは網膜裂孔、裂孔原性網膜剥離、硝子体出血について簡単に解説します。
【飛蚊症の原因となる注意すべき病気】
網膜裂孔:網膜に生じた裂け目のことです。加齢に伴うものが多いとされていますが、目のケガで強い衝撃が加わった場合に生じることもあります。網膜剥離の原因となることがあります。
裂孔原性網膜剥離:網膜に生じた網膜裂孔などが原因となり、網膜が剥がれてしまった状態です。剥がれた範囲、網膜剥離が続いた時間によっては視力が低下してしまう病気です。
硝子体出血:糖尿病や裂孔原性網膜剥離などが原因となり目の中の血管から出血が生じ、それが目の中にたまった状態を硝子体出血と言います。自然に吸収される場合がほとんどですが、原因によっては吸収されず、視力が低下してしまう病気です。
この他にもさまざまな目の病気が飛蚊症の原因となります。
どのような飛蚊症であれば眼科を受診すればよいのか
ここでは特に注意すべき飛蚊症に注目して解説します。飛蚊症には受診の目安となる4つのサインがありますので順に見ていきましょう。
1. 新たに飛蚊症が突然出現した
初めて飛蚊症になった、あるいは治っていたがまた新たに飛蚊症が出た場合は注意が必要です。経過を見ると、特に問題のない飛蚊症であることも多いです。しかし、問題ないかどうかは検査をしてみないと分かりませんし、前回の受診で問題ないと言われたとしても、再び現れた飛蚊症に病気が隠れていないとも限りません。瞬間的な飛蚊症ではなく、それが持続する場合は眼科を受診するようにしてください。
2. 飛蚊症の数が多くなる、大きくなる
飛蚊症の数や大きさが一定でなく、増えたり大きくなったりする変化があれば目の病気が進行した可能性があります。網膜裂孔の裂け目が大きくなる、網膜剥離になってしまう可能性もあります。受診済みで問題ないと言われた飛蚊症であっても、飛蚊症の数、大きさが変化した場合はなるべく速やかに眼科を受診するようにしてください。
3. 飛蚊症がある目にまぶしい光が見える
まぶしい光が当たっていないのに、目にまぶしい光が見えることを光視症(こうししょう)と言います。これは飛蚊症と同様、目の中で網膜裂孔や網膜剥離などを生じている場合に起こりうる症状です。飛蚊症がある目に光視症も出てきた場合は網膜裂孔や網膜剥離など目の病気を強く疑いますので、この場合も眼科をできるだけ速やかに受診するようお願いします。
4. 視野が欠けてくる、見えづらいなど他の症状が出てくる
飛蚊症に視野が欠ける症状を伴う場合は、裂孔原性網膜剥離や硝子体出血の範囲が大きくなっている可能性があります。また、その他にも見えづらさや目の痛み、目が充血するなどの症状が出てきた場合は何らかの目の病気を発症している可能性があるため速やかに眼科を受診するのが良いでしょう。
まとめ
飛蚊症の多くは問題ありませんが、中には失明に繋がる病気が隠れています。飛蚊症かもしれないと思ったら、特に今回の記事で紹介した4つのサインがないかどうかを必ず確認し、もし当てはまる状態であれば速やかに眼科を受診するようにしてください。
執筆者
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。