1. 雀荘での感染リスク
新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐために、「換気の悪い密閉空間」「多くの人の密集」「近距離で密接して会話」、いわゆる「3密」を避けることが求められています。
雀荘は「3密」に当てはまるイメージもあり、感染リスクは高そうに思われるかもしれません。実際に、雀荘は換気の悪い雑居ビルに入っていることもよくあり、卓に3-4人が密集することは避けられません。また、会話は控えるようにできても、ルールの上で発声は避けられません。
それならば雀荘には行かないほうがいいのかというと、杓子定規にそう言いたいわけではありません。店舗と来店客がともに適切な対策をしっかり行えば、感染リスクを最小限にしながら麻雀を楽しむことができると考えられます。
では、雀荘に行く時はどのような点に注意したらよいでしょうか。行政機関で作成された業種別ガイドラインが全国麻雀業組合総連合会のホームページにまとめられています。ここではそれを噛み砕いて、ガイドラインに沿った説明・補足をしていきます。
2. 一般的な感染対策
まずは、一般的な感染対策についてです。これらは聞いたことがある内容も多いと思いますので、簡単な説明に留めます。
新型コロナウイルス感染症では、症状が出ていない感染者でも感染を広げうると言われています[1]。そのため、雀荘内あるいは同卓に感染者がいた場合にうつされないよう注意するとともに、自分が感染者だった場合に他の人にうつさないようにする配慮が求められます。
そこで、一般的な感染対策として以下のようなものが挙げられます。
【一般的な感染対策】
- 入店時の手指消毒を徹底する
- 入店時に検温を行う
- 換気を十分に行う
- マスクを鼻まで覆うようにして着用する
- ドアノブやエレベーターのボタンなど、共用部位を定期的に消毒する
- 体調のよくない人は来店を控えるよう徹底してもらう
- 席と席の間隔をあける など
これらは日常生活でも多くの人が気をつけることに慣れてきた習慣かと思います。
3. 雀荘特有の感染対策:業種別ガイドライン
次に、雀荘特有の注意点について説明していきます。
他者と共有物が多いことへの対策
麻雀はゲームの性質上、牌や点棒など高頻度に触れるものを同卓者と共有します。新型コロナウイルスの感染経路として、唾液などが飛ぶことによる「飛沫感染」には敏感でも、手などを介した「接触感染」に鈍感な人は少なくありません。
手に付着したウイルスは、通常は鼻・口・目などを触った時や、飲食時をきっかけに感染するものと考えられています。
そのため、遊戯中は常に手にウイルスが付着しているものと考えて、顔を触らないようにすることが重要です。マスクの位置を直したいなどやむを得ない場合は、手を消毒してから触るようにしてください。業種別ガイドラインでは、1卓あたり2個の消毒液をサイドテーブルに設置するよう推奨していますので、さほど面倒は生じないはずです。
ちなみに、手荒れがひどい、手に傷がある、などの人では傷口から新型コロナウイルスが感染する可能性も指摘されています[2]。手洗いの徹底は手荒れにもつながりますので、保湿によるケアもあわせて行うと良いです。
向かい合って飲食・喫煙する機会があることへの対策
麻雀はしばしば長時間に及ぶので、遊戯中に飲食や喫煙をすることも多いものです。しかし、対局中の飲食では手についたウイルスを口に運んでしまうリスクがあります。また、自分が感染者だった場合には、ウイルスが口や鼻から手や雀卓に付着して、牌や点棒を介して同卓者に感染させてしまうリスクがあります。
このような恐れがあるため、遊戯中にマスクを外す必要がある行為、つまり飲食や喫煙は避けることが望ましいです。卓上にアクリル板やビニールカーテンがある店舗では、マスクを外しても良いように感じてしまうかもしれません。ところが、接触感染のリスクは十分残っており、遊戯中にマスクを外すことは推奨できません。
飲食や喫煙の時には、少人数で待機スペースを使うことが、業種別ガイドラインでも推奨されています。遊戯しながらの飲食や喫煙ではないので、同卓者に少し待ってもらったり店員さんに代走を頼む機会は増えてしまうかもしれませんが、感染対策のためにも皆で一丸となって取り組んでいければ、と思います。
なお、特にセット麻雀では会話が弾んでしまうこともあると思います。マナーとしてもあまり大声で談笑するのはよくありませんが、感染対策としても必要以上に大声を出すことには気をつけるのがよいと考えられます。ルール上の発声は必要ですが、その際はもちろん鼻までしっかりとマスクを着用していてください。
4. おわりに
ここまで雀荘での感染対策について簡単に解説しました。安全で安心できる環境づくりには、店舗の消毒や換気といった経営者・店員さんの努力だけでなく、来店客一人ひとりの感染対策意識や協力が欠かせません。
万が一感染者が発生した時のために、来店者名簿への記入や、接触確認アプリ(COCOA)の利用をお願いされたりするかもしれません。また、遊戯中の飲食や喫煙もできず、不便な思いをすることも多いかもしれません。また、週末の営業を自粛している雀荘もあるため、休日に麻雀を興じるというのも場合によっては難しいかもしれません。
それでも、卓を囲むのはやはり楽しいものです。オンラインで麻雀をすれば感染リスクはありませんが、実際に牌を握るのとはまた別物と感じる人も多いです。店舗と来店客が協力して感染対策をしていて、業種別ガイドラインを遵守している雀荘であれば、必ずしも来店を控える必要はないと思います(ただし、持病がある人や高齢者はより慎重に判断してください)。
感染対策と経済を両立させる「with コロナ」時代に合った遊び方で、麻雀を楽しむ一助としてこのコラムが役立てば幸いです。
【2021.05.04】
新型コロナ感染症の状況に鑑みて、一部内容を修正しています。
MEDLEY編集部
執筆者
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。