ガングリオンとは何なのか?
ガングリオンは関節を構成する「関節包」という膜がこぶのように飛び出ることでできます。中にはゼリー状のものが入っていることが多く、触るとぷにぷにと柔らかい感じがします。がんのような悪い細胞が詰まっているわけではないので、周囲の組織を破壊したり、身体のあちこちに転移したりすることはありません。一番できやすいのは手首ですが、指や足首など他の関節にできることもあります。
ちょっと気になる程度ならとらなくても大丈夫
ガングリオンは基本的にはとらなくても大丈夫です。というのも、中に詰まっているゼリー状の物質が悪さをすることはほとんどなく、半数以上の人は時間とともに吸収され、自然と良くなるためです。
ガングリオンの診断では次のいずれかの方法でしこりの中身を確認します。
- しこりに注射針を刺す
- 超音波検査やMRI検査などの画像検査を行う
もしこれらの検査から、しこりの中身が関節包に含まれるものであるとわかれば、ガングリオンと診断することができます。しこりの中の様子を調べることは他の病気と区別するうえでも重要です。がんなど他の病気が原因でしこりができることもあるので、一度は整形外科や皮膚科を受診して調べてもらうことをお勧めします。
ガングリオンをとったほうが良い状況とは?
多くのガングリオンはとらなくても大丈夫ですが、中にはとることを勧められる場合があります。以下に該当する人はガングリオンをとったほうが良い状況です。
- 急激に大きくなっている
- 痛みを伴う
- 見た目が気になる
- 関節を動かすのに不自由さを感じている
- 再発を繰り返す
- 手足にしびれを伴う
特に最後の「手足にしびれを伴う」というのは、ガングリオンが神経を圧迫しているサインであり、早くとったほうが良い状況です。
ガングリオンの治療法としては注射針でガングリオンの中身をすべて抜く方法と手術でガングリオンをとる方法があります。まずは注射針で抜く方法を提案される人が多いです。というのも、注射針で抜く方法は外来で簡単に受けられ、身体への負担も小さいためです。一方で、再発を繰り返す人には、ガングリオンを袋ごと取りきる手術が考慮されます。このようにガングリオンの状況に応じて、注射針で抜くか、手術でとるのかが決定されます。
今回はガングリオンの殆どの場合で治療の必要性がないことを説明しました。基本的にはそのままにしていても問題は生じませんが、見た目が気になったり、しびれを伴う場合などには治療が検討されます。また、しこりの原因となる他の病気との区別も重要なので、これまでになかったしこりができた場合には、一度医療機関で相談することをお勧めします。
自分の身体にしこりが出来たら不安になる人も多いと思います。このコラムによりガングリオンに対する理解が深まれば幸いです。
執筆者
・Filip De Keyser, UpToDate : Ganglion cyst of the wrist and hand (2019.12.2閲覧)
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。