ビスホスホネート製剤とは?
ビスホスホネート製剤は骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の治療などにも使われている薬です。骨はつねに骨吸収と骨形成の作用を受け、少しずつ新しい骨に置き換わっています。ビスホスホネート製剤は骨吸収を抑える作用があり、骨粗鬆症による骨折の危険性を減らすなどの目的で使われます。
ビスホスホネート製剤の副作用のうち、ごくまれに起こる深刻なものとして顎骨壊死が知られています。
ここでは多発性骨髄腫のある患者がビスホスホネート製剤を使用したときの効果と副作用が議論されています。
多発性骨髄腫に対するビスホスホネート製剤
アメリカのサウスフロリダ大学の研究班が、多発性骨髄腫に対するビスホスホネート製剤による治療について文献の調査を行い、結果を『The Cochrane Database of Systematic Reviews』に報告しました。
この調査は、過去に行われた研究データを収集して内容を吟味し、統合したものです。同じテーマの調査が以前にもあり、最近では2012年に更新されていましたが、より新しいデータも含めて更新しました。
多発性骨髄腫のある患者を対象として、ビスホスホネート製剤と偽薬、無治療、違う種類のビスホスホネート製剤のいずれかを比較した研究を集めました。
また顎骨壊死について報告した研究も集めました。
脊椎の病的骨折などを減らす効果
新しく見つかった4件の研究を含め、24件の研究が採用されました。
生存期間について調べた研究14件のデータを統合したところ、ビスホスホネート製剤を使ったグループと偽薬または無治療のグループの比較で、死亡率の差は確かめられませんでした。
骨折についてのデータも見つかりました。
脊椎骨折以外の骨折のリスクについて、治療による差は確かめられませんでした。
脊椎の病的骨折について、偽薬または無治療のグループに比べて、ビスホスホネート製剤を使ったグループではリスクが0.74倍に減少していると見積もられました。同様に、ビスホスホネート製剤を使ったグループでは骨格関連事象(病的骨折など)のリスクが0.74倍に減少していると見られました。
副作用について、6件の研究から顎骨壊死についてのデータが得られましたが、発生の割合は研究によってばらつきがあり、全体として不確かでした。
胃腸症状と低カルシウム血症についても報告がありましたが、データは不確かでした。いずれも得られたデータからはビスホスホネート製剤を使ったグループと偽薬または無治療のグループに統計的な差を確認できませんでした。
多発性骨髄腫にビスホスホネート製剤は有効か?
多発性骨髄腫に対するビスホスホネート製剤の効果と副作用の調査を紹介しました。脊椎の病的骨折を減らすなどの効果が確認されていました。
多発性骨髄腫の治療では、抗がん剤などによる治療のほかに、病気にともなって起こる骨折などのさまざまな問題を防ぐことも課題になります。実際の研究データの要約を参照することで、治療法を考えるうえでの参考とすることができます。
執筆者
Bisphosphonates in multiple myeloma: an updated network meta-analysis.
Cochrane Database Syst Rev. 2017 Dec 18. [Epub ahead of print]
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。