慢性特発性便秘に対する薬物治療
アメリカのメイヨー・クリニックなどの研究班が、便秘の治療薬の効果について文献の調査を行い、結果を専門誌『Gut』に報告しました。
この調査は、過去の研究のデータを使って、慢性特発性便秘の治療に使われる薬の効果を比較したものです。慢性特発性便秘とは目に見える原因がなく便秘が長く続く状態を指します。排便の4回に1回以上で強いいきみがあるなどの基準(ROME II基準またはROME III基準)を満たす場合を調査対象としました。
効果を比較するため、主な2種類の基準を決めました。
- 1週間あたり3回以上の完全自発排便があること
- 治療前に比べて完全自発排便が1週間あたり1回以上増えること
ここでは下剤などを使わず排便することを自発排便と言います。完全自発排便とは自発排便の中でも残便感がない場合を指します。
副作用については解析しませんでした。
ほかより優れた薬は不明
調査の結果、21件の研究が見つかりました。以下の薬剤が試されていました。
- プルカロプリド(日本では未承認)
- ルビプロストン(商品名アミティーザ®)
- リナクロチド(商品名リンゼス®)
- テガセロド(日本では未承認)
- ベルセトラグ(日本では未承認)
- エロビキシバット(日本では承認了承あり)
- ビサコジル(商品名テレミンソフト®など)
- ピコスルファートナトリウム(商品名ラキソベロン®など)
ポリエチレングリコール、ラクツロースなどについての研究も見つかりましたが、効果について解析に適した情報がありませんでした。
薬剤と偽薬を直接比較したデータから、以下の6種の薬について、1週間あたり3回以上の完全自発排便がある人が多くなると見られました。
- プルカロプリド
- ベルセトラグ
- テガセロド
- ビサコジル
- ピコスルファートナトリウム
- リナクロチド
また、以下の7種の薬について、治療前に比べて完全自発排便が1週間あたり1回以上増えることが多くなると見られました。
- プルカロプリド
- ベルセトラグ
- テガセロド
- エロビキシバット
- ビサコジル
- ピコスルファートナトリウム
- リナクロチド
ルビプロストンについては、主な2種類の基準に対応する情報がありませんでした。見つかったデータから、ルビプロストンによって自発排便(残便感がある場合も含む)が1週間あたり1.91回増えると見られました。
薬剤どうしの効果を統計解析により比較したところ、特定の薬剤とほかの薬剤の効果の差は確認できませんでした。
研究班は「慢性特発性便秘に対する現在の薬剤は類似した効果を示す」と結論しています。
便秘にどの薬を使う?
便秘に対して排便しやすくする薬の研究を紹介しました。
日本では未承認の薬も挙げられていますが、そのうちエロビキシバット(商品名グーフィス®)については、2017年12月4日の薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会で承認が了承されました。近い将来日本でも保険診療で使用可能となる可能性があります。
ルビプロストンについて不明だった点を除いて、主な効果の基準には差が見つからないという結果でした。
挙げられた薬にはそれぞれ作用のしくみなど違った特徴があります。ここで効果の基準とされた点には違いが見つからなかったため、効果について違った考え方で比較するか、副作用や使用が勧められない条件(禁忌)など、ほかの特徴によって選ぶことができると考えられます。
執筆者
Comparison of efficacy of pharmacological treatments for chronic idiopathic constipation: a systematic review and network meta-analysis.
Gut. 2017 Sep
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。